二
□百鬼夜行物語
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ドォオンッッ
『っく・・!』
ズザザッ
背後に感じた悪寒にその場を飛び退けば、聞こえた破壊音と、衝撃。
手を突き体制を整え、後ろを振り返って警戒を強めた。
擦り剝けた掌が、熱い。
【クスクス・・クスクス】
ああ、ああ
何故・・もっと早く気付けなかったのだろうと、自分に嫌悪した。
人が居ない
生き物の気配が無い
音が無い
テリトリーに、囚われているのだと・・煙が晴れ、狂ったように嗤う人成らざるモノを見ながら、今更ながら思った・・・。
―――――――――
――――――――――――――
【キャハハ】
ガァンッ!!
【キャハハハハハハハ!!】
『ッ』
簡単に言えば木のお化け
見かけで言えば、ルーツは少女のようだが、所々だ。顔には卒塔婆
足は根の様で
間違いない。
殺す気で襲ってくるのを避けながら走り続け、確信した。
『“呼児桜”』
今、付近で話題に上がってる妖怪だ。
『・・・どうする?』
走っても走っても先が見えない闇。
妖怪が人間を襲う事など珍しい事でもない。
しかし・・これは異常だと断言できた・・不自然だ。
【クスクス・・クスクス】
アヤナミちゃーん
『!!』
【アーソビーマショ】
ガッ!!
『ぅあっ!!』
呼児桜の腕が、まるで鞭のように唸りを上げて、刹那の身体に直撃した。
軽い体は容易に吹き飛ばされ、何もないはずの空間に激突する。
痛みと、少しの違和感
【ドコから食べよう?頭?足?腹カナァア】
クスクス
クスクス
一歩、一歩、
近づいて呼児桜は既に人の形を保ってはいなかった。
樹
一本の樹木。真ん中には目や鼻や口のようなものまでついている。
正に、木の化け物
【クスクス・・クスクス。ヤクソク・・約束・・マモル】
約束・・?
シュッ
ギュルルッ
『!ぐ、』
区の枝が体に巻きついて縛られた。
身動きが取れない
どうすれば・・!
―――・・・
『!?』
今、
【一人目、頭、二人目、首】
ぶつぶつつぶやく呼児桜の口が開かれ、中にはギザギザの歯。
歪(いびつ)に、歪む
【ナナニンメ・・腹】
グパァっと、更に大きく開けられた口
感じた酷い血臭に顔を歪める。
万事休すとはまさにこの事である。
――――・・!
『・・・!』
気が付けば、勝手に口が開いていた。
『今世の導きにより、礎の鎖を打ち砕き再び我が元へ降れッ≪妖刀:朝欺霧島(アサギキリシマ)≫――!!!』
瞬間、
眩い光が、辺りを包み込んだ・・!!
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