赤き炎の行方

□夢幻の虎姫
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『・・・ぅむ・・』




ぼんやりする目をゴシゴシ擦りながら体を起こす。

カーテンの隙間から射し込む日差しが眩しい・・




『そう言えば、今日と明日・・兄上が用事で家を空けるのであったか・・』




今日は土曜日

学校は休み故、何をしようかとむにゃむにゃしながら考えた。


取りあえず、眠い




『・・・むぅ』




下に降りれば、机の上にメモが置かれていて紙幣が数枚置いてある。


買い物でもして気晴らしに行っておいでと書いてある・・が、兄上。

二日分の食費を含めて三万は多すぎるでござる・・


トーストを焼きながら今日の予定を考えた。




『確か、あそこの服屋の新作のパーカーが出ていたはずにござる』




赤く、背に「情熱」と大きく書かれたパーカーで所々にフリルも付いていてアレだが、一目で気に入った。

無くなる前に買っておかねば!と思い立ったつい最近・・。


後は、ルーズリーフにシャーペンの芯も無くなりそうだったので買い足さなければ。書k図愛の補充も忘れずに、サラサラとメモを纏めた。




『時間だ』




ちらりと視線を時計に向ければ、朝の十時を指している事を確認してから家を出た――・・







――――――――
―――――――――――――――


『ゲットにござるぅぅう!!!』




道端で袋を胸に叫べば、周りから視線を大いに集めていて慌ててゴホン。と咳払いをした。




『最後の一着が残っていたとはなんと運の良き事か!帰ったら兄上に報告せねば!』




きっと兄は、また男らしい服を・・と苦笑するのだろう。でも、好きだからしょうがないでござる!

最後には良かったな。と頭を撫でてくれるであろう兄を思い、雪村は微笑んだ。




『ルーズリーフとシャー芯も買った。食材は帰りにスーパーに寄るとして・・ううむ。時間が余って・・』




ぴたり




言葉が途中で途切れる。

視線が在るモノを捕えて放さない。


逸らせない




じぃ




『・・・』




じぃいっ・・




〈スイパラ食べ放題!
カップル様限定一時間1500円!!

是非いらして下さいね♪〉




じゅるり




『ハッ』




慌てて口元を拭う。


はしたないでござる!

霧花にチョップを貰うところでござった!!


ぶんぶん頭を振って、名残り惜しそうに視線を逸らす。


入りたいが、今は持ち金があまりない故・・嗚呼、あまり買わないだろうと一万しか持ってこなかった過去の自分が憎いでござる・・!!


フリーで一時間2800円は高い・・


うう、デザート・・


涙を呑んで、スーパーでアイスでも・・と思った、その時だ。




「おい貴様ッ」


『ぅ?』


「何を間抜けた顔をしている!青いリボンで髪を結った貴様だ!」




某か!


くるりと、体を反転させて声のした方に視線を向けた。




『某に、何か用でござるか?』




そこに居たのは、恰好よく私服を着こなした・・銀の髪が鳥の嘴のような不思議な形をした男だった。

鋭い目が、雪村を射抜く。




「用が無ければ引き留めたりなどせん。貴様、暇ならば私に付き合え」


『なぬ?』




突然の申し出に、キョトンとした顔をした。

それを気にも留めず、男は黙って雪村の腕を引き、ズンズンと歩き出す。






(誘拐は犯罪にござるぅぅう!!)


(黙れ。誘拐ではない!)


(違うでござるか?)


(貴様の発言を私は許可しない!)


(理不尽!!)













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