銀魂長編
□銀魂長編/2
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「…バクチ、ですか?」
「あァ」
楠木の頭に?が浮かぶ。
一瞬こいつバクチ知らないんじゃないのかと思ったが、
3年もここで暮らしているのだ、知っていると考えた方が普通だろう。
本人も、「そうですねェ、」と呟きながら、考える素振りを見せる。
「……好き好んでやるほどではないです。けど、まァ…好きな方でしょうね」
考えた末の、あやふやな答えだった。
「……バクチが、どうかしましたか?」
声は落ち着いているが、楠木の顔はニヤけていた。
そんな楠木に応えるように、晋助様の口角も上がる。
「………最近、江戸ではバクチが流行っているそうだ。なんでも、結構な裏事業が関係しているらしい」
「…………ヘェ」
声のトーンを変えずに、短い返事を返す。
顔の笑みは、より一層深くなっていた。
まるで、なにか面白い出来事が起こることを悟ったように。
「天人一般人問わず大規模な商売をやっているようだが…そんだけ大規模な賭場だ。相当な人権が必要なんだろうな」
「…何が言いたいんです?」
楠木がそう問いかけたところで、晋助様の目に鋭さが増す。
私は黙って、2人の話を聞いているしかなかった。
晋助様が、楠木をゆっくりと見据えた。
「…面白ェ話じゃねェか。この御時世に、江戸の華がまた一つ増えたようなモンだ。…楠木、お前なら何を考える?」
晋助様が嘲笑気味に言った。
楠木が、うっすらと口を開く。
「何を考える……と、言われましてもね。私には、その賭場を仕切る主が気になって仕方ありませんねェ」
「…………」
晋助様は黙るが、楠木は続ける。
「大規模な賭場なら、幕府の目を欺ける権力が必要でしょうし。一度お目にかかりたいものですねー…」
語尾をわざとらしくのばし、これまたわざとらしく首を傾げる。
「…………で、誰です?」
そして、確信をついた。
「………そうか。勘のいいお前なら、予想がつくと思っていたが…__」
晋助様の声が、徐々に低くなる。
「____……孔雀姫の、『華陀』。名前くらいなら知ってんだろ」
「……」
華陀の名前が出た瞬間、一瞬だけ楠木の顔から笑みが消えた。
「…また、随分と大層なお姫さんが出てきたものですねェ」
だが、すぐにもとのペースにもどる。
その少しの反応を逃しはしなかっただろう。晋助様が、楠木に問いをかけた。
「…どうだ?楠木。この件、お前なら乗るか」
静かに、朝もやが晴れていく。
「__…乗ってみましょうかね」
____.