銀魂長編

□銀魂長編/5
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「どちら様も、ようござんすね」










低い女の声色が部屋の中に響く。


女の右手には、サイコロが2個、左手には網でできた壺皿を備え、まさに今、その物事が始まろうとしていた。


女は手慣れた動きで素早くサイコロを壺皿の中に忍ばせると、バン、と威勢のいい音をたてて盆ギレに叩きつける。


「ちょうかはんかァ!」


それと同時に、これまた威勢のいい女の声も放たれた。


その声を合図にしたかのように、辺りからは次々と『ちょう!』『はん!』等とむさ苦しい男達の蛮声が聞こえてくる。


そして俺達もまた、その男達と同じように野蛮な叫びをあげるのであった。








「「ちょおォォォォ!!」」





















「……いやぁ〜、冬じゃなくて良かったな。凍えるところだったぜ」


「そーだな。財布の方は一足早く冬を迎えちまったがな」


「いやぁ〜、ホント、ついてるぜ」


「そーだなついてるな。貧乏神的なモノが絶対憑いてるな」










こんな会話をするのはこれで何回目だろうか。


そんなことを思ってしまうくらい、もうこの状況には慣れていた。


賭事をして、負けて、着物を引っ剥がされて、ほぼ半裸状態でその場に立ち尽くす。


もう嘆くことすらも必要ないような、いつも通りの清々しいフォーメーションだ。


…つーか、原作を読んだことある読者だったらこの状態をある程度は理解してくれているだろう。





「そーいや、最近左肩が重いんだよね。意味もなく」


譫言のように、俺の隣を歩くグラサンが言った。


「なんか乗ってるカンジなんだよね。貧乏神的なモノが」


曲がってない?左肩なんか曲がってない?と原作独特の問いを掛けてくる奴のことをあまり気にはせず、


「気にしすぎなんだよ。陰気なツラしてたらツキも逃げちまうぜ」


と、俺は同じく原作独特のテキトーな返事を返した。




……まァ、こうなることは最初からわかってたんだけどね。


「俺もよォ、最近なんかデケー鎌もったオッさんが視界にちらつくんだけど」


ノリでこんなことを口走ってみる。


「もう気にしないことにしたよ」


「それは気にした方がいいと思う!!」


こんな状況でも案外真面目にツッこむところはこいつのいいところなのだろうか。


一応そうしとこう。


ま、ぶっちゃけもしそんな奴が今この瞬間俺達の前に現れたとしても、こんな世界だからそこまで驚くということはしないんだろうけどな。


それに、そいつがなんかガチでアレ的なオーラを出しているんだとしたら、俺達は真っ先に地獄におちるということも知っている。





「…………」





あと、


今、長谷川さんの後ろにいる真っ黒な奴の存在がガチでアレ的な存在だってことも知ってる。





「…ホラ、言ってるそばから」

「!」


長谷川さんの後ろを指差すと、


「アンタの後ろに…」


そこには原作でお馴染み真っ黒な奴が。




「ギャアアアアアアア!!悪霊退散!妖魔降伏!えろいむえっさいむ!てくまくまやこん!」


ありったけの呪文を叫ぶ長谷川さんをよそに、そいつはバサッと布状のなにかを投げつけてきた。


「ぬお!!」

ドサッ


受け取る姿勢を崩した長谷川さんが倒れる。


それからやや遅れて、黒尽くめの野郎が喋り出した。





「…ついてるだついてねーだ、アンタらそれでも博打打ちかィ?」


異様な雰囲気を漂わすソイツの口調は落ち着いていて、推定すると60代ぐらいのオッさんといったところか。


渋い声色からして、大方こんなことが考えられた。





「?…こいつァ」


そして投げつけられた布に目をやると、


「俺達が引っ剥がされた着物」


その布は柄等からして、確かに、先程まで俺達が身に纏っていたものと同じやつだった。

……あり、なんで?


「あんた…」


何故これを。

そう言おうとした時、そいつは被っていたフードを取り、顔を現した。








「ババァの炊き出しじゃねーんだ…待ってるだけじゃツキは回ってこねーよ。ギャンブルの女神はテメーで口説き落とさなきゃあよ」









____.
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