曇天に笑う
□第3幕
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天火が逃げ出した犯罪者たちを捕まえにいったあと……
「姉貴、白子さん。
留守番頼みます。」
「空丸、宙太郎、どこにいくの?」
私と白子で洗濯を干しにいくところに、宙太郎を連れた空丸がやってきた。
いくところなんて何となくわかっていたが、あえて聞いてみた。
「姉貴、止めんなよ。」
「……」
洗濯物を白子に頼み持ってもらい、二人に近づく。宙太郎は怒られると思っているのか今にも泣きそうな顔をしている。空丸も然り。
前までいき、今にも私の背をお追い抜こうとする空丸とまだまだ小さい宙太郎と目をあわせる。
「行ってもいいけど、
ケガしちゃダメよ。
あと、必ず帰ってきて。
待ってるから。
さぁ、行きなさい。
天火のお手伝い、しっかりしてきなさいね。」
私が二人の頭を撫でながら言うと、宙太郎は目をキラキラさせて大きく返事を返し、空丸は「わかってる」と照れくさそうにしている。
「俺らは曇の男だ。
待ってろ、姉貴!」
「雨唯姉、いってくるっス!」
走り去っていく後ろ姿を最後まで眺め、白子の元に戻る。
「天火に頼まれていたのに…」
洗濯物を受けとると白子が小さくため息をついて微笑んでいた。
「大丈夫。
あの子たちは天火と私の
弟たちだもの。」
白子
あなたがどれ程私たちのために頑張ってくれているか私は知っているよ
ずっとそばにいてくれて
優しく見守ってくれる白子
だから、あの子達が心配なのよね 。
まだ雛のあの子達が。
まだ飛べないあの子達が
「あの子達はまだ飛べないけど
飛ぶための羽ならもうあるから。」
「……ふふっ。
そうだね、雨唯。」
あなたは知らないのでしょうね
私はあなたも
大事な子だと思っているのよ。
「白子。」
「ん?」
「ここにずっといて。」
「っ」
「あなたは天火の大事な友人。
私にとっても大事な友よ。」
さぁ
今日も曇天の空の下に
笑顔を咲かしてあげましょう
「雨唯もこの曇天の下にある太陽だ。」
そんな白子の呟きは前を歩く私には聞こえることなく曇天の空のしたに消えた。