◆・短・◆

□・死に場所・
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こんな処で、死ねない。

いつもそう思う。

[死して屍遺す無かれ]

その謂れ通りだと思うからだ。

もし、この身体が分析され、解明され、記憶を辿られ。
自分の見てきたものや感じていたものが暴かれた時。

絶対他人なんかに見せてたまるかと思う。

だから、死ぬ時は。
自分の死に場所は。

貴方の隣でありたい。

僕が死に逝く時は、貴方が僕の全てを灰にして欲しい。

貴方が微かに見せた素顔だったり。
何時間も其処に佇む背中だったり。
血に染まった頬を冷酷な眼差しで拭う指だったり。
誇らしげに術を披露する華麗な姿だったり。

自分の眼が追っていた。
追い続けてきたのは誰だったのか。

自分の屍は、きっと語ってしまうから。

折角、口にせずに胸に秘めてきたこの思い。

何も知らない他人に暴かれるなど、許せない。

だから、貴方が直ぐに灰にして。

跡形も無く僕の全てを消し去って。

貴方を思うこの気持ち。
僕だけの[特別]にさせてください。


「…いくぞ、テンゾウ」


闇の中で、貴方の声が聞こえる。

いつ何処でだって死ねる自分だから。

その覚悟は、出来ているから。


「…はい」


せめて、最後くらいは願いたい。


どうか、自分の死に場所が。

貴方の隣でありますように、と。




 

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