月に寄り添う太陽
□ウィッチ・ウィザード
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記憶に強烈に刻み込まれた瑠依の流血騒ぎから、数年の月日が流れた。
小学校を卒業した後、俺こと赤城颯太と瑠依はイギリスへ引っ越した。
お父さん……瑠依の父親の仕事の都合だったのだが、日本と様相の違う街や人々になかなか慣れることができず、俺達二人はいつも部屋に籠っていた。
窓から見える公園で、おそらく俺と同年代であろう子供達が遊んでいる。
しかし、彼らの肌は俺達と違い白く、髪は俺達のそれより明るい色。
時折聞こえてくる、理解できないけれど楽しげな会話。
深いため息が隣から聞こえてきた。
「どうした。」
「いや……なんでもない。」
小さな声で呟いた瑠依の表情は、つまらなそうに沈んでいた。
あの輪の中にはいって一緒に遊びたい……しかし、言葉の壁はつい先日まで日本で暮らしていた瑠依には大きすぎる壁。
木製の窓枠が、きっと瑠依には鉄格子か何かに見えていることだろう。
バタンと、瑠依は勢いよく窓を閉めた。
「ねぇ颯太、ゲームしよ。」
「ゲーム?でもお前、日本のゲーム機器はここでは……」
「大丈夫だよ、昨日お母さんが遊べるようにしてくれたもの。へんあつき……だったっけ?
それを付けたから、ちゃんとこっちでも動く筈だ、って。」
「ふーん……」
ほらはやく、と楽しげにはしゃぎながらゲームを用意しだした瑠依。
閉め切られた窓から、もう子供達の楽しげな声は聞こえない。