月に寄り添う太陽
□魔法界
1ページ/3ページ
ロンドンにあるパブ「漏れ鍋」を通り、俺達は両親とともにダイアゴン横丁へやってきていた。
もちろんこのダイアゴン横丁に入る手段は手紙に書いてあったのだ。
ごく普通の、魔法使いでもなんでもない両親が、そしてその子供である瑠依や、俺が、そんなことを知っているはずもない。
魔法使いや魔女でにぎわう横丁に俺達が唖然としていると、体を覆い隠すような大きなローブを身にまとい、奇妙な三角帽子を被った女性が杖をローブにしまい告げた。
「ようこそ、ダイアゴン横丁へ。ホグワーツの学用品なら、すべてここで揃いますよ。」
「えぇ、ありがとう。助かったわ。」
瑠依の母親の言葉にニコリとほほ笑むと、その女性は踵を返してパブへと戻っていった。
ダイアゴン横丁に入るには魔法使いの助力がないと無理なようで、しかし魔法の扱い方なんて殆ど知らない俺達は、ちょうどパブにいた先ほどの女性の力を借りたのだ。
そして彼女によってダイアゴン横丁に案内してもらい、現在に至る。
「うーん、それじゃまずは制服を見繕いしてもらいにいこうか。」
「ちょっと待って。確かここでは私たちの通貨は使えないそうじゃない。だからまずは銀行へ行かないと……」
瑠依の両親の会話を隣で聞きつつ、ふと瑠依のほうを見た。
いつもの瑠依なら、この魔法に満ちた世界を見ればはしゃいで煩いぐらいに騒ぎそうなのに、先ほどからずっと静かだった。
「瑠依、どうした?」
「……」
「瑠依?」
「……え?何?」
「何、ってお前……」
さっきから瑠依の様子が変だ。
何か変なものでも見つけたのだろうか、とまわりを見渡すが特におかしい点は見当たらない。
……というか、周りすべてが変なものばかりだった。