月に寄り添う太陽

□ホグワーツ特急
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 時は流れ、入学式当日。
今俺達がいる場所は、ロンドンにあるキングス・クロス駅。
9と4分の3番線という、なんとも摩訶不思議なその言葉の意味が分からず、俺達はキングス・クロス駅で途方に暮れた。
日本人で、しかも大量の荷物と鳥籠の中に梟を入れている俺達がよほど珍しいのだろう、駅をせわしなく行き交う一般人――魔法界ではマグルというらしい――から、時折不審なものでも見るかのような視線を向けられていた。


「参ったな……」


頬を掻き、困り果てた父親の言葉が喧噪に紛れ聞こえてきた。


「もしかして、ダイアゴン横丁のときみたいに魔法使いの人の力借りないと入れないとか?」

「それは無い。恐らく学校というくらいだから、お前や颯太みたいな境遇の子達が他にいるはずだ。
だから魔法を知らずとも、ホグワーツへ行ける手段がないとおかしい。」


父親の言葉を聞いて思い出したのは、赤髪の溌剌とした少女と黒髪の寡黙な少年。
それもそうだ、しかしだとするならどうすればいいのか。
打開策の見えない現状に焦りだしたちょうどそのとき、俺達同様大荷物をカートに乗せた子が駅に現れた。

「やぁ、おはよう。君達も今年入学なのかい?」

「え……?」

「おっと自己紹介が先だったね。僕はジェームズ・ポッター。君達は?」


確かに、こんな荷物を抱えている一般人などどこにもいない。
彼が俺達をホグワーツ関係の人物だと察するのも無理はない。
……しかし、なんで入学生だと分かったんだろう。そんなに幼く見えるのだろうか。

俺達を見るなり人懐っこい笑みを浮かべ話しかけてきたのは、黄色がかった薄茶色の、くしゃくしゃな髪をした少年だった。
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