月に寄り添う太陽

□入学式
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 ホグワーツに到着し、列車が停車した頃には既に空へ月が昇っていた。
薄暗い道を抜け、白霧に覆われ肌寒い湖を渡った先にあったのは、高く聳える古城。
既に空は闇に包まれているためか、頂上は霞んでよくみえない。
およそ自分の想像していた学校というものと大きく異なる圧倒的な威圧感に、萎縮するもの、興奮冷めやらぬ者等生徒の反応は様々だった。

やがて城にたどり着いた俺達を待っていたのは、四角い眼鏡を掛けた魔女。
城の中に入るころには生徒の興奮も最高潮に達しており、各々仲の良い者達と騒ぐものが後を絶たなかったが、魔女の一喝で騒ぎは途端に静まり返った。
以降、入学式の会場である大広間へ辿り着くまで、無駄話をするものは一人足りとて存在しなかった。

この人には逆らってはならない。生徒の心が一つになった瞬間であった。





「何かやらされるわけじゃなく、帽子を被るだけなんて。
なんだか拍子抜けだね。」

「楽でいいじゃないか。」

校長での話もそこそこに、遂に寮の振り分けが始まった。
突然帽子が歌いだしたことには驚いたが、帽子を被るだけで寮を決めてしまうとは。
魔法学校らしい、突拍子もない手段に瑠依は目を輝かせていた。

「アオツキ・ルイ!」

先ほどの魔女の厳粛な声が大広間に響く。
話す暇もなく早々に呼ばれた瑠依は、呼ばれるがまま帽子のそばへ歩いて行った。
瑠依の容姿……欧米に住む者とは思えない幼げな、そして黒髪黒目の丸い顔をした彼女を見て、僅かにだが大広間がざわめいた。
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