月に寄り添う太陽

□Misfortune
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 波乱の、少なくとも俺個人にとっては衝撃的な入学式から、はや一か月が経過した。
俺やセブルスは勿論、瑠依、そしてリリーの関係は、寮を違えた今であっても特に変わる事は無かった。
それは大広間の合間に、それは授業の合間に、それは合同授業の時に、会えば挨拶するし、荒唐無稽な無駄話に花を咲かせる事だってある。
しかしどうして、やはりというか、当然というか。

この一か月、彼と何か話すようなことはなかった。

彼、ジェームズ・ポッターの噂はスリザリン寮に所属する俺にすら届いてくるほど、彼は有名だ。
どうやら彼はこの一か月で新しい仲間を見つけ、彼等4人はよく固まって行動し、そして悪戯に励んでいるらしい。

シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、そしてピーター・ペティグリュー。

特に知り合いというわけではないのだけれど、そんなジェームズと共に行動している彼等なのだから、自然と名が知れるのも当然といえば当然だ。
全員なかなか個性的な生徒たちで、スリザリンではあるけれどそれ以前に俺は彼の友人だと(少なくとも俺の中では)思っているから、彼等を同寮生のように悪く思うことはできなかった。

友人の友人は、やはり俺にとっての友人なのである。

こんな事をセブルスに言えば、きっといつものようにあの言葉を俺にぶつけるのだろう。
本当にお前はスリザリンらしくない、と。

しかし、俺はスリザリンだ。
だからこそ俺は、この一か月彼と言葉らしい言葉を交わしていないのだ。
彼と、その友人である彼等と、親しげに会話することは叶うことはない。

だが、リリーや瑠依といつものように「友人」をできているのも事実。
彼と彼女達の間で一体何が違うのか、俺には分からなかったけれど。
けど、きっかけさえ、チャンスさえ、機会さえ巡ってくれば、きっと以前のように話せるだろう。

最初は堅苦しい、他人行儀な挨拶から。
やがて段々と言葉は砕けていき、そして最後にはあの時と同じように親しげに話をし。
最終的には、あの彼等の輪の中に、時々、ほんのすこしだけでも、偶に入れるようになるのではないか。
そんな希望的観測を、この一か月俺は抱き続けていた。
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