文
□お前は僕の犬だから
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「おい、宮田」
僕は隣にいる彼を呼ぶ
「何でしょうか、淳様」
そうすると彼は従順な犬のように僕の言葉に反応し、そして何を考えているのか分からない無機質な瞳で僕を見つめた
「っ…何でもない、呼んだだけだ」
本当は用があったのだ、しかしこんなことを言えば彼はたとえ本心でなくともyesとしか言わない、そう思い僕は言いかけた言葉を飲み込んだ
「…そうですか」
彼はそう呟けば僕に背を向けた、僕は彼の背を見つめ「嗚呼、いつかはこいつも僕の犬ではなくなる、そうわかっているのに、わかっているのにどうしてこいつが僕の視界に入るたびに溺れていくのだろう、どうせ僕から離れていくのなら首輪をしてずっと僕のもとで飼っていたい」そんなことを思っている自分に自己嫌悪し眉に皺をよせつい彼の背から目をそむけてしまった
「宮田」
そして僕は再度彼に声をかける
「…なんです、か」
面倒くさそうな声で彼は振り返ろうとした、が僕が後ろから抱き締めて「振り向くな」と言ったため動作は途中で止まった
「いきなりどうしたんです?」
今度はどこか呆れたような、だが優しいような声で彼はそう問いかけた
「…何でもない、少し疲れたんだ暫くこうさせてくれ」
僕はそっと目を閉じ彼の背中に顔を埋めた
「わかりました、落ちつくまで側にいます」
そう言った彼に僕は自分でも聞き取れないほどの声で呟いた
「離してなんてやらない、お前は僕の犬だから」