文
□きもちわるい
1ページ/1ページ
ある夜、宮田は目の前の書類に目を通していた、だが少しすると疲れたのか書類を机に置き椅子の背もたれに身を預け天井を見上げた。
ふと目線を横に向けると宮田の恋人、恩田美奈の写真が目に入り宮田は眉間に皺を寄せる。
膨らんだ胸、柔らかい体、狭い肩幅
全て母と同じ身体気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
そんなことを考えていると部屋の扉が開いた、だが宮田は気づかず考え込んだままでいた
部屋に入ってきた人物、彼の恋人は宮田が考え込んでいるのを不思議に思い相手の背に手を伸ばし声を掛ける。
「…先生?」
恋人の手が背中に触れると同時に宮田は勢いよく振り向き手を叩いた。
「触るな‼」
宮田はそう叫ぶとハッ、と我に返り急いで「…すまない、少し驚いたものでな」と恋人に謝罪した。
「いえ、私こそ先生が考え込んでいるというのに話掛けてしまってすいませんでした」
恋人は薄らと微笑み優しい、甘い声音で謝罪する彼に言い肩手に持っていた缶コーヒーを置けば早々に部屋を出ていった。
恋人が部屋を出て行ったと同時に宮田は母と同じ身体をした恋人に触れられた嫌悪感から溜まっていた物全てをその場に吐きだす。
「ゲホッ!ゲ、ァ…!っ…は、ぁ」
荒くなった息を整えれば宮田は次第に落ち着きを取り戻し口元から銀の糸を垂らし自分の吐いた物を見つめる。
「っ…今日はきっと疲れているんだ…早く帰り寝て忘れてしまおう…」
嘔吐物を手早く処理し、帰る支度をしている時恋人の持ってきた缶コーヒーが目に入った。宮田は徐に眉に皺を寄せコーヒーを掴みゴミ箱へと捨てた。
医院を出ようとすると「先生、お疲れ様です!また明日」と後ろから恋人に声を掛けられた。
「ん、其方こそお疲れ様、コーヒーありがとう、美味かったぞ」
思ってもない建前を口にだすと恋人は嬉しそうに笑う。
医院を出て車に乗り込みしばらくすると家に着いた。宮田は荷物を置き風呂に入ろうと脱衣所に行き服を脱ぎ始め、服を洗濯機の中に入れようとしたが恋人が自分の白衣に触れたことを思い出すと白衣を洗濯機の中に入れようとする動作をピタ、と止め白衣をそのままコーヒーの様にゴミ箱に押し込んだ。
宮田は風呂場に入るとシャワーだけで済ませてしまおうと頭と体を洗うとすぐに風呂を出た。
「…疲れた」
宮田はそう言うと近くのソファーに腰を掛けゆっくりと瞼を閉じそのまま深い眠りに落ちていく。
「司郎は悪い子なの、お母さんを悲しませる悪い子なの」
「ねぇ、お母さん司郎の話聞いてよ」
「司郎がいい子だったらお母さんは司郎のことぎゅーしてくれたのかな…」
「お母さんごめんなさい」
「司郎は悪い子悪い子悪い子悪い子悪い子悪い子悪い子悪い子悪い子…
宮田が起きて時計を確認すると11時59分。顔を触ると嫌な汗をかいていた。
カチッ、ボーン ボーン ボーン
どうやら日付が変わったようだ
嗚呼気持ち悪い