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□【島国】寝正月【全年齢】
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「イギリスさん、みかんを持ってきましたよ」

「ひとつもらってもいいか?」

「はい、どうぞ」

「ありがとう。」

両手で差し出されたから、両手で受け取った。
みかんが思った以上に冷えていて、少し驚いた。
しかしそれよりも、菊の手が冷えていることが気にかかった。

「お前・・手つめたいな」

「そうですか?自分では気が付きませんでした」

日本はコタツに入ると、みかんをひとつ手にとって、おもむろに剥き始めた。

「イギリスさんご存知ですか」

「なにを?」

「日本には、みかんの皮をむく芸術があるんですよ」

「へえ・・」

日本ってホント変わってんな。

そう思っても、口には出さない。
日本が、実は他国の評価をやたら気にしていると分かっていたから。

「イギリスさん、どうしてニヤけていらっしゃるのですか」

「あ、いや、何でもねえ」

日本の視線が刺さる。
真っ黒な瞳孔を見つめても、何を考えているのか、さっぱり読めない。

「ポチくん、みかんですよ」

「ワン」

あの犬あったかそうだな。
そこで俺は、大事なことを思い出した。

「おい日本、ハツモウデに行かなくていいのか?」

「ああ。」

日本は少し考え込むような素振りを見せたあと、

「イギリスさんは会議でお疲れのようですし、日を改めましょう。
初詣には、体力が要るのです。」

「俺は別に大丈夫だけど・・・ふぁ」

言いながら、あくびをしてしまった。

「寝正月、という素晴らしい過ごし方もあります。いかがですか?」

「そんな言葉もあるのか」

どう過ごすにしても、日本と一緒なら悪くない、と思った。

年賀状を配達するバイクの音がして、ポチ君が短く鳴いた。

END.
(次ページあとがきです。)
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