□【ギルッツ】バレンタイン【18歳以上】
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「兄さん」

ルートヴィッヒは目を伏せたまま、彼の兄に呼びかけた。

「何だルッツ」

ギルベルトは、風呂上がりに居間でテレビを見ながら腕立て伏せをしていた。
それはトレーニングの一環というより、暇を持て余している内にただ自然に体が動いていたと言う方が正しい。

ギルベルトは体を起こし、あぐらをかいて、瞳を輝かせて弟を見つめた。

「俺様と一緒にテレビを見たいのか?ほら、こっち来いよ!」

上機嫌で床をバンバン叩いてくる。

「いや、結構だ」

ルートヴィッヒは兄を軽くあしらい、
仲間から聞いた話を思い出していた。

「日本では2月14日に女性が好きな男性にチョコレートを贈るそうだ」

「ああ、そうらしいな。俺様も菊から聞いた事あるぜ」

今日は2月13日、明日がバレンタインデーだ。

ルートはパソコンのキーボードを鳴らす手を休めた。
柔軟をし始めた兄に向かって、尋ねる。

「兄さんは・・その、女性に花を贈る予定はあるのか」

「・・・花?」

ドイツのバレンタインデーは、男性から女性に花束を贈るのが一般的だ。
そして、すでに交際しているもの同士のためのイベントだから、

「あるぜ」

こう答えられると、恋人がいると宣言されたも同然である。

「そうか・・・」

誰に、とは聞かなかった。
聞けなかったという方が意味合いとして正しいかもしれない。

幼馴染みのエリザだろうか。いや、それとも・・

兄の交友関係は熟知しているつもりだが、恋仲に発展しそうな者は容易に思い当たらなかった。

しばらく沈思した後ギルベルトを見ると、よっとかほっとか言いながら、柔軟体操に耽っていた。



「じゃ、行ってくる」

帰りは遅くなるから、と言って、ギルベルトは遊びに出かけた。

陽は高く昇り、ルートヴィッヒを照らした。
一人でソファーに腰を下ろし、柄にもなく放心する。

―兄さんは今日、誰かに花束を渡す。


外泊するとは言われていないが、夕飯は要らないらしい。
なにしろ今日は、「恋人たちの日」なのだ。

自分以外の誰かが、兄から花束を受け取り喜ぶ様を思い浮かべる。

心の準備をしておかなければー

―準備?なぜだ?

ここまで考えてルートヴィッヒは、急に甘いものが食べたくなった。
普段は別段食べたいとも思わないのだが、

そうだな、チョコレートがいい。

そう思い立ち、最寄りのスーパーマーケットへ向かった。


安くておいしいと評判のチョコレートと夕飯の具材を購入したルートヴィッヒは、それですっかり満足して、近所のジムに立ち寄った。
ひとしきり運動して汗をかいた後、帰宅して夕飯を作る。
今日の献立は、ヴルストと野菜のスープ、ジャガイモ添えだ。

スープの下ごしらえが終わったら、時刻は18時を回っていた。
昼間に熱心にトレーニングをしたおかげで、ルートは軽い眠気に襲われていた。

―今日は急を要する仕事もないし、一眠りしよう。

ソファに横になって、眠る。
目が覚めたのは、21時頃だった。

ギルベルトはまだ帰って来ていない。

一人で夕飯を食べてから、
シャワーを浴びて上がったのが、23時頃。
部屋の寒さがやけに身に染みた。

ルートヴィッヒはおもむろにキッチンに立ち、小鍋に水を入れ、そして火にかけた。
素早くチョコレートを刻み、ボウルに入れて湯煎にかける。
温度計を使って、湯が適切な温度になるよう調整する。

日本の女性は、好きな人に手作りチョコをプレゼントするのだという。
チョコを手作りするといっても、溶かして固めるだけだ。

ローデリヒなら凝ったアレンジもできるのかもしれない。
そのときのルートには、マニュアルも、計画もなかった。
ただ溶かすだけ溶かしたチョコを、どうやって食べようかと思案していたその時。

玄関の方で物音がした。

「良い子にしてたかルッツー!」

聞き慣れた声がする。
ギルベルトが帰宅したのだ。

「兄さん、俺はもう子どもじゃないんだ」

「ケセッ、俺にとっては、いつまでも可愛い弟だぜ!」

「弟か」

ルートは、兄の方を向けなかった。
ガサガサと音がするが、恋人から花束のお返しでももらったのだろうか。

「あッ・・もしかして夕飯作ってくれたのか!?」

ギルベルトが足早に近寄ってくる。

「いや、違うんだ、これは・・」

ルートが説明に苦慮していたら、後ろから中身を覗き込まれた。

「チョコ?」

「食べたくなったんだ」

「日本のバレンタインみたいで、いいじゃねーか。ケセセッ」

「あ・・・」

「ルッツが俺様にくれるんだったら、『本命チョコ』だな」

「そんなわけないだろ!!」

悪気の無い爽やかな笑顔で言われたものだから、
つい大きな声を出してしまった。

「どうしたんだよルッツ・・そんなに嫌か?」

「兄さんには、恋人がいるんだろ」

「・・・え」

「兄さんにやるチョコレートなど無い。寝ろ。」

「ええええ、ちょっと待て!ルッツ!せっかくだし俺様にも食わせろよ!」

ルートは無言でパンとチョコレートが入ったボールを掴み、早歩きで食卓へと向かう。

「・・・じゃなくて!大体、俺様に恋人なんて・・・」

ギルベルトはルートの後を追いかけて、何もないところでつまづいた。

前に倒れるついでにルートのシャツを掴んで引っ張ったものだから、
両手がふさがっていたルートまで尻餅をついてしまった。

「はあ・・兄さん・・」

「ごっ、ごめんな!掴まるものが何もなかったからつい・・って、ルッツ!」

ルートのシャツにはべっとりとチョコレートがついていた。

「はは、兄さん、やってくれたな」

ルートは弱々しく笑って、服を脱いだ。
チョコレートが首を伝って胸に落ちる。

「今日はチョコレートは無しだな。そういうことで兄さん、すまないが浴室を先に使わせてくれ」

ルートが立ち上がろうとすると、腕を掴まれて座らせられた。

ギルベルトはルートを抱き寄せ、首筋に口を付けた。

「おい!何してるんだ兄さん!」

ギルベルトはルートの肌に音を立てて吸い付き、肩のあたりを軽く噛んだ。

ルートは驚きのあまり、全力で突き飛ばそうとしたが、
無言の赤い目に射竦められ、静止した。

ギルベルトは、弟の頬についてチョコレートを舐めとった。
生温かいチョコレートと、柔らかい舌の感覚に、ルートの全身は強張った。

「あ・・」

与えられる感覚に耐えかね、声が漏れてしまった。

「俺様上手い?」

「くっ・・下手くそだ」

女性相手に練習したから手慣れているのかと思うと、悪態のひとつも吐きたくなる。
ギルベルトはボールに指を入れてチョコレートを絡め、ルートの胸の先端を擦り、吸った。

「あぁっ・・」

ルートの呼吸が荒くなる。

「チョコレートまだ残ってるだろ」

ふいに訊かれてボールをみると、まだ少し残っていた。

「あっ・・ああ、わずかになら」

「それ、俺様に舐めて欲しいトコにかけろよ」

「なっ・・なぜそんなことを」

言いかけて、ルートは考えた。
もしかしたら、女性とセックスするつもりだったのに、
何らかの事情によってできなかったのかもしれない。
それで兄さんは、代わりに俺を使って欲求不満を解消しようとしているんだ。

―こんなことはもう、二度と無いかもしれない

ルートは震える手でボールに手をかけ、
腹のあたりにチョコレートを垂らす。

それを見たプロイセンはルートの部屋着のズボンと下着を一気に引き下ろした。

「兄さん!」

「こっちだろ」

プロイセンはルートの性器を軽く指で弾いてから、
ボールを持った腕を掴んで、屹立したルート自身にチョコレートをかけた。

「ああっ・・」

生ぬるい液体が滑り落ちる感覚にルートは身悶える。

ギルベルトは弟の性器を口にはさみ、軽く舐めた。

「・・甘ぇな」

ルートは下半身をくつろげられてから自制が効かなくなり、喘ぎ続けている。

「ルッツ、顔赤ぇぞ」

「これは・・寒いからだ」

「ふーん。俺様が熱くしてやんよ」

先端に軽く吸い付かれて、ルートは思わず兄の頭に手をかけ、腰を浮かせた。

「もっとやって欲しいのか」

「・・しっかりくわえろよ、兄さん」

言われると同時に、ギルベルトは弟のものを喉まで銜え込んだ。

口をすぼめたままゆっくり先端に戻ってくると、ルートが大きく震えて、射精した。

ギルベルトはそれを飲み込んで満足げに微笑み、

「うまかった。ご馳走さま」

そう言ってルートの頬にキスした。

待ってな、と言い残し台所に向かったギルベルトは、温かい濡れタオルを持って戻って来た。
そして、丁寧にルートの体を拭いていった。
拭き終わると、自分が着ていたパーカーを裸のルートに着せた。

「さすがにこのままだと風邪引きそうだしな。ケセセッ」

ルートは兄の体温が残った服を着ることができて内心嬉しく思ったが、
どうしても気になることがあった。

「おい」

「ん?なんだルッツ」

「兄さんはああいったことを、どこで覚えたんだ」

言った後に余計なことを聞いてしまったと、ルートは後悔した。
しかしギルベルトの答えは、ルートが残念に思うようなものではなかった。

「夢の中で、気がついたらお前にそういうことばっかしてた」

「・・それは本当か、兄さん」

「ああ。もっとやらしーこともいろいろ・・」

「恋人がいるのにか?」

「だから、ルッツは勘違いしてるけど、恋人なんかいねーって」

ギルベルトは、外から持って来た紙袋から花束を取り出した。

「俺にはハナからルッツしかいねーんだよ」

「兄さん」

「受け取ってくれるよな」

ルートヴィッヒはjaと言って、兄を押し倒した。

 - 完 -
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