□【春待ち】うちはコンビニじゃないんだぞ【全年齢】
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ピンポーン。

「・・・はい。」

部屋の主は、明らかに不機嫌そうな声でインターホンに答えた。

『こんばんは』

その声は、同じ大学に通うイヴァンのものだった。時刻はとっくに午前0時を回っており、事前に連絡があったわけでもない。
なにより、二人は深夜にどちらかの家で会うような間柄ではなく、研究室で二回か三回、話した程度の仲だ。
従って、アルフレッドがイヴァンの突然の来訪に驚くのは至極当然のことである。

「君、どうしてここにいるんだい。」

玄関に出てみて、アルフレッドはTシャツだけでは肌寒いと感じたので、パーカーを羽織った。

『別に、大した用はないよ』

イヴァンの声色は、至って冷静なものだった。

「それじゃ帰ってくれ。俺は寝るから」

事実、アルフレッドの目蓋の重みは眠気によって限界に達しており、一刻も早くベッドに戻りたいという気持ちであった。
アルフレッドは、玄関に背を向けようとした。

『待って』

アルフレッドは、半分眠りながらその声に耳を傾けた。

『入れてくれたら、明日のお昼ご飯おごってあげる。それでどう?』

「君、一体何が目的なんだい?」

アルフレッドの声は、イヴァンを焦らせた。部屋の主が自分から離れて行くのを、どういうわけか堪え難いことだと思ったのだ。結果、素直にならざるをえなくなった。

『君と話がしたいんだ。』

「はあ、何の話だい」

『宇宙の話、とか・・』

そこでアルフレッドは、さっさと話を終わらせる方がたくさん眠れると判断し、ドアを開けた。

「やあ、いらっしゃい。さあ速く入ってくれ。なにももてなせるようなものはないよ」

イヴァンは鼻を赤くしていて、かすかに笑みを見せた。

「それで、構わないよ。入れてくれてありがとう。」

アルフレッドの頭は眠気で十分に働かない。だからイヴァンの微笑みを見て、なんとなく嬉しいと思っている自分に気がつかなかった。

(つづく)
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