虹が待つ丘。
□世界とは。
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私の世界には決定的に欠けているモノがあります。
それは『色』。
赤とか青とか黄色とか緑とか。
私の世界には決定的に欠けているモノがあります。
それは『感動』という名の『感情』。
歓喜とか昂りとか情熱とか………愛とか。
私の世界には決定的に欠けているモノがたくさんあります。
夕日の美しさ、月や星の輝き、照りつける太陽の眩しさ。
世界はこんなにも美しいのに、それらを美しいと思える自分はいないのです。
………どこを探しても。………どんなに探しても。
私の世界はモノクロで、殺風景で、味気なくて。
上も下も右も左も、すべて灰色、なんてつまらない世界。
ロックシンガーの世界すら変えてしまえそうな歌声も。
冬の誰かの悲鳴のような隙間風も。
雨にうたれ続ける湿った土の匂いも。
色がなければリアリティに欠けるのです。
………まるでテレビの中の遠くの出来事のよう。
だから目の前に横たわる『死』だって。
遠い遠いところの出来事のように感じるのです。