短編


□一番後ろの席
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僕の三つ後ろの席は、彼女の席だ。

教室の一列は七人。
僕は前から四番目。列の真ん中辺りだ。
つまり何が言いたいかというと、彼女の席が一番後ろにあるということ。

「じゃあ、後ろの席の人、プリントを集めて下さい。」

ほら、来た。

後ろから椅子を引く音がいくつかする。
そこら中から、紙が擦れる音がする。
僕は机の端にプリントを寄せて、ひたすら教科書に目を落とした。
小さな足音が聞こえて来て、それは段々と此方に近付いて来る。

紙が擦れる音が、一回、二回、

――――――三回。

僕の机から、プリントが無くなった。

視界の端に、細く白い足と、紺色のスカートの襞が揺れるのが見えた。

微かに、彼女特有の甘い香りが漂った。

僕はまだ顔を上げない。
もう一度、彼女が横を通り過ぎるからだ。

まだかまだかと、たった数秒の時間をじっと待つ。
そして、再度視界の端に、細く白い足と、紺色のスカートの襞が揺れるのが見えた。
それは僅か数秒、いや、それよりも早く、一瞬で過ぎ去った。



彼女の残り香が、辺りを漂った。



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