短編


□綺麗な黒板に愛を書く。
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終業の鐘が鳴った。教室内は途端にざわつきだし、部活に行く者、携帯を取り出す者、様々である。
因みに今日はLHRが有った為、清掃は無い。なので、日直である私が黒板を消さなければならないのだ。

「ばいばーい。」
「じゃあね、部活頑張れ。」
「うん、ありがとー。」

黒板までの僅かな道のりで、数人のクラスメイトと言葉を交わす。我ながらよくクラスに馴染んでいると思う。
そして、黒板消しを手に取ると同時に、もう一人の日直が教壇に足を踏み入れた。彼は私に向けて人懐っこい笑みを溢すと、黒板消しを手に取り作業を始める。私も彼に倣って、端から黒板を消していく。
教室内の話し声を背に、黒板消しを上から下ろし、一歩横に移動してはまた上から下ろすという動作を繰り返す。そうすれば、数分も経たない内に私と彼の黒板消しがぶつかった。後は下に落ちたチョークの粉を集めてゴミ箱に捨て、今日の仕事は終了。
そう思った矢先、彼は方向転換をして再び黒板と向き合った。何をするのかと見ていれば、チョークを手に取り黒板の左端へと移動する。
まさかとは思うが、

「あー…。」

綺麗にしたばかりの黒板に、チョークで何かを書き始めた。しかも大々的に。
た行がどうとか、よく聞き取れない呟きを漏らしながら力強く書かれていくのは、大きな数字。左から、“4*11333224444*333”。最後の方は入りきらず、こじんまりと恐縮してしまっていて、なんとも見映えの悪い数字の羅列だ。

「お前、やるなー。」
「こんな公共の場でよく出来るよな。」

後ろから、騒がしい声が聞こえてくる。どうやらクラスメイト達はこの数字の意味が分かっているようだ。無論、私は全く分からない。
まあ、私には関係の無いことだろう、と、踵を返そうとした時、背を向けていた男子生徒が振り返り、私の方を見た。

「?」

彼は頬をほんのりと赤く染め、歯を見せてはにかむ。瞬間、クラスメイト達は、今度は私にも囃し立てるような言葉を浴びさせた。

誰か、説明お願いします。切実に。












昔、友人達の間で流行っていたものを思い出したので、それを元にしてみました。
因みに数字の意味は、携帯で文字を打つ順番です。
機種によっては“*”が“#”になったりします。



蜜月様へ提出

お題:シフルの秘密



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