短編小説

□教えてあげる
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「ねえ、イルミー」

「なに?」

「イルミは好きな人とかいないのかい?◆」

「なに?」

目の前の男は、表情一つ変えずに同じ言葉を二度言った。

「イルミは男の子だろ?」

「今更何言ってんの?」

「だったらさ、今まで好きな女の子とかできたことないの?」

「ないね」

即答か。
イルミらしいけどね。

「女の子に魅力を感じたこともないの?」

「ないね」

「じゃあ男に興味あるのかい?◇」

「きみと一緒にしないでくれる?」

「本当、変わってるねえ」

「恋愛なんて必要ない。むしろ邪魔なだけだよ」

「じゃぁ、どうしてきみはよく僕の家に来るのかな?」

「家に帰るより近いから」

ハンター試験以降、イルミはよく僕の家に来るようになった。

理由を聞けば、だいたい今と同じことを言う。

たしかに暗殺の仕事がパドキア共和国内だけということはまずない。

だから家から遠く離れた場所での仕事なら、帰るまでにどこに泊まることは普通だろう。

だがイルミの場合、それが常に僕のいる場所なのだ。

僕の家、僕が泊まっているホテル。

どこにいても、イルミは僕のいる場所にやってくる。

それもわざわざ電話をして居場所を聞きいてやってくるのだ。



イルミを愛している僕としては嬉しいんだけど、そんなことされたら期待するじゃない?

好かれてるのかってね。

もし本当にイルミが僕のことが好きだとしても、本人は自覚していない。

イルミは感情が乏しいから。

もちろんそんなところも好きだけどね。


だから教えてあげるんだ。


君の僕に対する感情の名前を。
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