〜暁帝国皇帝が異界へ〜
□第02話 魔法と科学
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第02話 魔法と科学
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ヴェストリの広場に着くとギーシュが薔薇杖を掲げながら、周りにいる生徒達にこれから決闘をすると言っていた。
白龍はギーシュの前に距離をとって立つ。
「ほう、来たか」
「あぁ来たぞ。まぁ『お遊び程度の決闘』をしにな」
ニヤリと笑いながら白龍は挑発する。
「減らず口を……。まぁそう意気がっていられるのは今だけだ」
薔薇杖を振るい、花弁を一枚地面に落とす。するとそこから戦乙女が出現した。
「ほう」
白龍は目を細め戦乙女を観察する。
「僕はメイジだ。だから魔法を使い、ワルキューレが戦う」
「興味深いな。だが見たところ、やはり俺が直々に相手をするには物足りないな」
「なに?逃げるのか?」
「逃げる?俺に『逃げる』という選択はない」
空間モニターを投影し、親衛型の戦闘機兵を一機出した。
「あれは魔法か?なんで平民のあいつが魔法を使えるんだ?!」
ギーシュが驚きの声を上げる。辺りでもざわめいている。
「これは科学だ。魔法よりも上位に当たるものだ!」
周りで見ている生徒達にも聞こえる程の声でギーシュに言い放つ。
「魔法よりも上位に当たるものだと?笑わせるな!そんなものあるわけないだろう!行け、ワルキューレ!」
ギーシュの命に戦乙女が動き出す。
「青銅か。やはり鈍いな。やれ」
護衛型戦闘機兵は戦乙女の拳打を高い機動性で交わし、戦乙女の顔面を掴んで圧倒的な握力で握り潰す。
「ワ、ワルキューレ?!」
戦乙女は崩れ、土に戻った。
「弱いな。魔法というのには興味を持っていたが……それでは雑用で精一杯かな?」
白龍は親衛型機械兵士を戻す。
「くっ、図に乗るなよ!平民風情か!!」
ギーシュはさらに薔薇杖を振るい、六体の戦乙女を出現させる。
「強化甲冑マーク3、装着」
白龍は電子記録化させていたマーク3を出し、自動装着する。
「紫(ユカリ)、いるか?戦闘開始だ」
「機体良好、了解。戦闘を開始する」
迫り来る戦乙女達の剣や槍の攻撃を重力慣性で空へ上がって避け、同時に全ての戦乙女を肩部の小型散式弾頭で当てていき、爆散させて降り立つ。そして左掌から光球を威力を抑えて、ギーシュの足元へ撃ち放つ。ギーシュは驚いて後ろへ跳ねて倒れた。
地を這うように逃げ出すギーシュの前に白龍は重力慣性で宙を移動し、退路を阻んだ。そして全ての武装を展開し、照準をギーシュに狙いを定めて、言い放った。
「降参するか?どうする?」
「す、する!降参するから命だけは助けて!」
頭を抱えながらギーシュはその場でうずくまった。
「わかった。マーク3をしまう。紫は隣に」
「強化甲冑マーク3を電子記録化、処理終了」
マーク3は消える。そして白龍の隣に紫が現れる。
「確かギーシュと言ったな。先程俺を『平民風情』と言っていたが、全く違う。これでも俺は暁(ギョウ)帝国の皇帝だ。覚えておけ」
白龍はルイズの方へ歩き出す。
「こ、ここ……皇帝?あのゼロのルイズは皇帝を召喚したのか?!」
ギーシュの言葉に白龍は足を止めて振り返る。
「今の言葉、やめてもらおうか」
「な、なにを……ですか?」
ギーシュは敬語で聞き返した。
「ルイズを『ゼロ』と呼ぶのを止めろ。召喚の儀とはその者に相応しい者が喚び出されると聞いた。そしてルイズはこの俺を呼び出した。ならばルイズの悪口を吐くことは俺に吐いたことと同等と見る。次に吐いた時は、その胴体から首が無くなると思え」
「はい、わかりました!もう言いません!」
ギーシュは額を地に擦り付けて言った。
「それから言い忘れたが、シエスタに謝罪しろ。わかったな?」
「わかりました、すぐにやって来ます!」
全力疾走でギーシュはシエスタに謝りに向かった。
「よし。ルイズ、決めたぞ。これから先、魔法が頂点ではないと言うことをお前に見せていく。この決闘が始まりだ」
そう言ってその場を後にし、部屋へ帰った。
ルイズと部屋へ入った時だった。ノックがかかり、ルイズが出る。するとノックをしたのはコルベールだった。
「失礼、ええと……君の使い魔はいるかい?」
「はい」
ルイズは部屋の隅へ視線を向け、それを追いコルベールも視線を向ける。白龍は紫にマーク3の点検を任して、先程の決闘を記録しているところだった。
「ちょっと君、今から学園長に会ってもらえないか?」
コルベールの言葉にモニター打ち込む手を止めた。
「……今は点検と記録をしているところなんだがな。何のようで俺の邪魔をする?」
「邪魔をしてすまない。先程の決闘の事や君の事で少し話をしたいんだ。そのゴーレムについてもね」
「ゴーレム?これは強化甲冑だ。ゴーレムと言うのではない。紫、点検はどのくらい終わった?」
「八割程……今終えた」
「まぁいいだろう」
白龍は立ち上がり、マーク3の方を見る。
「その学園長に会おう。紫、マーク3の残りを自動にして電子処理化してくれ。終えたら紫は、そのままついて来てくれ」
「うん、わかった」
頷いた紫はモニターを操作して設定し、電子処理化を済ませた。
「終えた」
「よし、行こうか」
四人は部屋から出た。
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