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□マゾヒステリック
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「このマゾが」

俺がそう言われた暁には、土方は糞転がし程度に落ちぶれている。必然である。



「このマゾが」

どうだ今頃。助けて、許してという声がする。聞いてろ。いまに。すぐに。

「許して」

俺が言ってどうする。

「辱められて感じてんのは誰だ?」

糞転がしの口振りには到底思えない。土方がいけしゃあしゃあと、その、見ているだけでマヨネーズの味がする唇を縦横に動かしているからだ。



―――――俺がマゾって言ったら笑いますか?

丁度いい暇つぶしか、はたまた性悪のラブゲームか。とりあえず土方には気のない爆笑をされる不始末。どっちにしろ、今日の俺は十二星座占い十二位の血液型選手権ビリだ。そういえば今日バズーカを屯所の寝具脇に置いてきた。嗚呼。つくづく。

「俺をいじめて下せェ」

「はいはい」

「俺は本気でさァ」

「そうかよ」

「荒縄とか薔薇鞭とか、俺の、貸すんで」

俺は自他ともに認めるSだ。見境なんてものは毛頭持ち合わせていないが、土方を虐げることに格別長けているSだ。だが飽きた。細々したことなんて真っ平だ。時にはでかいことがしたい。そんな俺の脳裏に浮かんだ至極の下剋上等。リスクがでかいほどメリットもでかいとはまさにこのことだと言っても過言ではない。

「笑えねーな」

「俺はこれから起こることを考えると楽しみでつい笑っちまいます」

マゾだサドだっつったって、乳繰り合ってもいない奴に是も非もない。

「気持ちわりぃ」

「俺は気持ちいいですぜ」

俺は実はマゾだなんて、誰にも是とされなければ誰にも非とされないんだ。

「来い」

だから罠に掛けた。

「はい」

阿呆な土方の後について歩く。得意満面、有頂天外。後方からでも悟れる素っ頓狂な土方の面に、俺は知らず笑窪を深めた。


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