T

□感冒疑い
2ページ/4ページ


「フィニ?」

「えっ」

幹の反対側から声がする。聞き覚えのある重低音。安心する。渇望する。

「バルドさん?」

眼下に広がる自分の痴態に我に返ってゾッとした。どうしよう、僕は、お仕事中に。何をしたんだ。ズボンとパンツを足首まで下ろして、利き手をそこに触れさせて。

「あ、の、これ、は」

「ワリ。邪魔したな。出直すわ」

後向きに手をヒラヒラと振ってそこを離れるバルドロイ。これはちょっといただけない。

「待って、バルドさん、僕、こんな、も、しない…からっ」

眼下どころか上中下すべてがぼやけて、濁った中をバルドの鋭いブルーアイが貫いていた。見られている。ギョロギョロ。ジロジロ。

力が抜けて膝を落とすと、むき出しのそれに丈の長い草が触れて居たたまれなかった。一刻も早く事態を収拾したいのだけれど、そこまで頭が回らない。

「ひあっ!」

僕じゃない声が出る。どうしよう、僕は、また何か痴態を、バルドに。

「いっぺん楽んなれ」

それが先程まで向かい側にいたバルドの所為だと気付くまで、僕の弱い頭では、少々時間が掛かりすぎた。

「え、バル、何して、んぅ!」

ゴツゴツした硬い皮膚に僕の熱がくるまれる。耳元で低音がクスクス、と笑った。僕は風邪を引いているんだ。バルドにうつしては、坊っちゃんの食事に、お身体に差し障ってしまう。

「すげー濡れてきたぜ」

おちんちんが熱くなって、ドロドロになってグチャグチャになる。どうしよう。僕はこんなに高熱だったっけ。これはもしかしたら、坊っちゃんからほんの少しお暇をもらわなくちゃいけないのかもしれない。


次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ