俺は二十歳になるまでキルアを抱かないと決めていた。 「もう限界」 俺は一ヶ月と持たず音をあげる。 実は俺はゲイではない。 よくわからないルールを設けたがためにフラストレーションに嵌まるのは耐え難い苦痛で、ハンターサイトを巡っては下品な女の裸に無理な興奮を強いた。それもすぐに萎えて、気が付くとキルアが右脳に甘い言葉を吐いてくれている。実際に聞いたのはもうずっと昔な気さえするが、俺はキルアでなくちゃ勃起不全なのだから仕方がない。 「何が」 それを知ってか知らずか、彼は俺にしばしば過剰ともとれるスキンシップを図ってくる。 今だってそう。俺が小さい脳みそを使うのに必死に眉間に皺を寄せていると、すかさずキルアは俺の両頬をつねり上げて、思い切り顔を近づけてくる。小悪魔ってこういうのを言うんだなって痛感しているところだ。 「ちょっと」 キスできそう。 そう思うのは俺の勝手だが、もしそうなってしまえばきっと歯止めがきかなくなってしまうに違いなかった。だから、よほど外とか、時間がない限り俺はキスさえもを拒んでいる。 「なんで嫌がんの」 「そういう気分じゃ」 「こないだのホテルでもそうだった」 「そうだっけ」 「俺はそういう気分なの」 「んっ」 まくしたてるように施されるキスは歯と歯がぶつかるほど雰囲気もへったくれもないもので、キルアの唇の感触はほぼ皆無だったのにも関わらず、あと一秒、あと一秒とねだるように唇を尖らせてしまう。 「おしまい」 「うん」 「嫌じゃなかったろ」 「うん」 キルアことが大好きだ。 確かミトさんに、こういうのはけじめが大事なのよって父さんの武勇伝と共に言って聞かされた。その時に、父さんが父さんになったときと同じようにしようって、キルアとの間に子供なんかできるわけないのに真に受けてしまった。 俺だってそれなりの覚悟でキルアと付き合っている。まさか男と乳繰りあうなんて考えてもみなかったことを早くしたくて堪らない。もちろんリスクが、おそらくキルアにのみ多大に降りかかることも知っている。キルアを壊したい気持ちと守りたい気持ちが同居して、一人で悩んでいるのは阿呆なことなのかもしれないが、それもすべてキルアを思えばこその話。 であるからして、俺はキルアが大好きだ。 |