「キルア」 「ん」 そう言えばレオリオにも、男同士なんてそれだけで奇特なんだから大事にしてやれよ、なんて言われたことがあったっけ。 さっきも言ったけど、実は俺はゲイではない。きっとキルアもゲイではない。まあ多少前評判はあるにしろ、女の裸に興奮する類いのろくでなしだ。 「ううん。なんでもない」 「なんだよ、気持ちわりーな」 「可愛いなって思っただけ」 うげーとかなんとか、キルアはえずく真似をするけど、こう言った後が一番可愛いのを俺は知っていて、意地でもこちらを向かないキルアを後ろから抱き締めて、このままでもいっか、なんて思う。はずもなかった。今、キルアの顔をぐいとこちらへやれば、回した腕を降下させたら、衝動のまま舌を耳に埋めたら、そんな浅はかな妄想に脊椎をやられている。やっぱり俺はキルアが大好きなのだ。 「んん」 今日の部屋はキングサイズのベッドが一つ。お互い寝相はいい方ではないが、幸い気にならない程度に俺たちは寝付きがよかった。だから、夜中の二時に目が覚めたけど、またキルアが夢で蛇活の訓練でもしてるのかなって二度寝に徹した。肉体操作をしてないだけマシである。 「ゴンっ」 そうして瞼を閉じ直してすぐのことだ。 「ゴン、ゴ、ンっ」 啜り泣くような上擦った声がしたのは。 身体が重いのは相変わらずで、眠たい頭を叩き起こして目を凝らせば見覚えのある癖毛が蠢いていて、なんだキルアか、え、キルア、え、って五度見くらいした。確か右隣で小さい身体をさらに小さく縮こまらせていたはずだ。キルアは俺の膝を跨いでちょうど腰、というか性器の辺りで俺の名前を呼んでいる。それはキルアの夜這いを暗に意味していた。 「えっ」 「ゴ、ン、んんっ」 「キルア」 「ゴンっ」 「キルア何してんの」 「ん、あ、ゴンんぅ」 俺の問いかけにキルアはまるで聞く耳を持たず、一心不乱に股間にしゃぶりつく様は俺が童貞であることを差し引いても凄まじい。 事態を収拾出来ないまま流され続け、半ば自暴自棄にいよいよキルアとの一線を覚悟した頃だ。 「キルアっ、もう」 にわかに信じがたいのだが、突如としてキルアは、俺の、今まさに吐精に臨む性器を丸投げし、すっと身体を退けて俺の右隣に丸くなったのである。正気の沙汰とは思えない。張りつめた自身と彼とを交互に凝視して俺はトイレに駆けた。 |