「なあ」 「おっさん、ホテル行くぞ」 もちろん金はレオリオ持ちな、そう席をたってキルアは颯爽と店を出た。飯代だって俺の奢りじゃねーか。すっかり軽くなった財布の中身を忙しなく整えて、一番でかい札を出す。釣りはいらねーよ、なんて小洒落た台詞を繰り出したくなるようないい昼下がりだ。太陽が暑すぎない。風も強すぎない。これからキルアのラブホテル探しに付き合わされることを除いては。 しっかり釣りをいただいて外の空気を思い切りを吸い込むと、早くしろと言わんばかりに物騒なヨーヨーで暇を潰すキルアに出くわした。 「俺、回るベッドのあるとこがいい」 そんなことはどうだっていいんだ。 今すぐ、とは言わなくても今夜、そう、ホテルにはいるまでにキルアを改心させなくてはならない。キルア、レオリオさんのおっきいのいれてほしいの、と言わせなければ、いや、気持ち悪いな、これはこれで。 「今時そんなん流行らねーよ」 「えー」 とりあえず下手したら俺捕まるし、話をそらそう。幸い街は賑わっていた。あちらこちらに餓鬼の好きそうなものはある。不格好なモニュメント、街頭パフォーマー、駄菓子屋におもちゃ屋。しかしキルアはそのどれにも興味を示さない。というかさっきからずっと、獲物をとらえるようにある一点を見つめて微動だにしない。 「あそこがいい」 細い腕が伸びるその先にお伽の国はあった。いわゆる城を模した典型的なラブホテルである。 「あれは、違うぞ」 「何がだよ」 「潰れたアミューズメントパークか何かだ」 「休憩と宿泊、あ、エッチなオモチャ貸し出し自由だってさ」 何でこいつは無駄に視力がいいんだ。 さよなら、俺の健康的な消化器系。堅実で平凡な人生。牢獄ではきっと模範囚として生きよう。 「最初だしゆっくりやろうぜ」 「宿泊で」 |