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□プロポーズ
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「あっつい太陽の下で冷たい海に入るとものすごく気持ちいいんだよ」

「ふうん」

「森に行くと不味そうな色の果物がいっぱいでさ、でもめちゃくちゃうまいんだから」

「へえ」

ああ、夕飯はハンバーグかな。
話がうまく抜けていかないから、もう意地になって変に細かいところまで献立を組む。フィッシュアンドチップスがついてたらもっといいかも。架空のメニューに垂らすはずの涎は別のところから拭いても拭いても流れてきた。涎よりよっぽど味がある。正直言って腹なんてこれっぽっちも減っていなかった。

「あとはミトさん。すっごく優しくてね、俺の面倒見てくれてた人だから絶対会ってほしいな」

「そっか」

そんないとおしそうな顔をするんだ。
動物的な瞳を少し細めてはにかむように話す様は、俺に告白した時よりも恋をしていた。ああ、これでは益々、笑ってさよならなんて無理そう。仕方がないんだなあって八方塞がりでパニクるにはもってこいだが、そんな柄じゃない。やっぱり俺は静かに泣くしかなかった。

「今すぐじゃないよ。けど、天空闘技場でまとまったお金が入ったんだ。もうちょっとしたら、家を建てたいと思ってる」

「凄いな」

「そしたら、ペットを飼ったりバーベキューしたり、すっごく楽しそうじゃない?」

「だな」

「だからさ」

またそんないとおしそうな顔をする。
俺が俺でなくなるなんて御免なんだ。そんな顔をされたら、いろんなのが、こう、走馬灯みたいになって、嗚咽が出てしまう。


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