「はあ」 彼女の隣室でただただ過ごすには些か遊具が足りない。備え付けのシングルベッドと食器も満足にのらないちゃちなサイドテーブル。時代錯誤も甚だしい異様な柄のソファは二人で座るのも気が引ける。足なんか組んだ暁には一人掛けと化した。 「つまんねーの」 あからさまにベッドに横になって首の後ろで両手を組む。その体勢は癖になっていて、つい油断して愚痴を溢してしまうことがあった。 「私は好きだぞ」 は? 「好きだから、かまわないと思う」 ベッドの軋む音。僅かに香るシトラス系の香水は昔女々しいと散々馬鹿にしたクラピカの愛用品である。顔に掛かるか掛からないかの微妙な距離でふわりふわりと揺れ動く白金の髪は、手入れはされているが随分伸びて毛先が揃わない。 「今ここでしてしまっても」 え、なに、正気かよ。言語障害はクラピカらしくもない。余裕のない心境は火を見るより明らかで、しかしこのシチュエーションでは俺も容易く動揺させられた。やり過ぎたか。しもしない反省を脳内で述べて、ここは穏便にと軽薄な謝罪をするつもりだった。 「んっ」 悪い、と言いかけた唇に温いものが触れる。無意識に閉じた目を今度は反射的に開いて、抵抗すれば四肢を押さえつけられる。上半身を何かが這っていった。鎖。にしては滑らかで軽量だ。 「あっ」 首筋をまさぐっていたのがすっと降りてきたかと思うと、その冷たい生き物は執拗に乳頭を攻め立てていたぶるのを好んだ。 「うん、あっ」 「キルア」 身体中が熱をもって、マゾヒスティックに啼く。そこで初めて、捲り上げられたトップスの中にクラピカの綺麗な指を見た。耳元で囁かれた声色はクラピカのもの。望み通りのど真ん中ストライク。やや崩れた、隙だらけの、困っているクラピカその人である。 「キルア」 「クラピカ、あっん」 これは想像と違う。 |