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□月が綺麗ですね
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AM1:00

ノブナガのことを考える。





彼は異郷を思わせる風体で、盗賊団にしては義理人情に熱く、小粋で、圧倒的に強かった。
高い位置で束ねられた長く黒々とした髪は、ポマードのせいだろうか。余裕と感懐を垣間見せ、雄々しくも乱暴でない、ダンディズムを露呈していた。白黒どちらともつかない黄色の肌に、上唇を飾る程度の髭が蓄えられ、やや垂れた目尻にはどうにも不釣り合いな鋭い眼光が常に周囲を恐喝する。

「くそっ」

彼とは一度尾行に失敗して以来、奴等のアジトでの一件から顔見知りだった。無論待ち合わせて会うような気心の知れた仲ではないが、ゴンに興味を持ったらしい彼は時折執拗ともとれる言動でしばしば入団を勧めてくる。俺に、ではなくゴンに、である。あえて予防線を張ったのは、俺が、ノブナガがゴンを好きだと知っていて、ノブナガに思いを寄せているからだった。文字通り寝ても覚めても脳裏をちらつくサムライは、もはや寝かせてもくれないまでになっている。



また今日も眠れない。



ベッドに横になって口許まで布団を被っても、まだ瞼は閉じられず、じっと床を見つめ彼のオーラを探っていた。彼はかなりの円の使い手で、稀に強力、というにも言葉足らずな凄まじい念を四メートル円形に放つ。使い道は知る由もない。運よく出くわすと、見たことがあるわけではないので多少の語弊はあるものの、冷酷で虐げるような目に一層情緒が消え失せる感覚がやけに顕著で、半身が熱をもっていけない。それがこの寝床に訪れないか、物騒にも夜風を部屋に招待しながら待つのが習慣であった。


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