「えっ」 一転、晴人の身体は宙に浮いた。 「いただきます」 ベンチがまたギシ、と音を立てる。成人男性一人押さえ込むのだ。今度は大袈裟などではない。 晴人をベンチに縫い付けて、首筋に顔を埋める。攻介の右手はまだ先のなだらかな乳頭を捕まえて、指の腹で緩い刺激を与えている。捲り上げられた脇腹からそよ風が入ってくすぐったい。晴人は眉を寄せて強く瞼を閉じ込んだ。 「こっち向けって」 「やっんん」 「声も聞かせて」 「はあっ、あ、こうす、け」 「なに?」 「ああっ、それ、やぁん」 「これ?」 唇で挟み込んで、軽く吸いながら舌をちろちろと動かすのが好きらしい。いい時に嫌々と言うのは日本人の特性だ。攻介は平らな胸をまさぐるのが楽しくなりつつあった。強く揉みしだくことはできないが、頂きは女よりずっと顕著に反応してくれる。 「ん、んんっ」 「声」 「おま、アッ、ここ、屋上」 「わかってる。皆まで言うな」 「わかって、ない、だろっ、ふ、ううっ」 「だって晴人がよく見える」 毛先の遊んだ茶髪が晴人から剥がれていく。攻介の澄んだ瞳に、晴人の痴態が収まった。死んでしまいたい。自分の、お仕置きなどとアブノーマルな企てを棚に上げて、晴人は心底羞恥に乗っ取られていた。まだ日は高く、空気も暖かい。外、昼、処女喪失。条件は何一つ整わない。それでも攻介は舌舐めずりをして、得意気に両乳首を抓り上げる。 「ひゃんっ」 身体を仰け反らせて少し大きな声が出る。下着が貼り付いてきてどうにも不快だ。服を着ているのも苦しいくなってきた。 「出んじゃん」 カチャカチャと音を鳴らして攻介の中指が下着に入り込んでくる。性器に触れるとまた晴人がびくりと身体を震わせた。一気に足元まで下ろしたボクサーパンツは先走りで汚れている。当然晴人自身にもそれはまみれていて、攻介の一挙一動にとくとく、と生成されていた。余り大ぶりではないが、綺麗だ。攻介は自分のものをそうするように、掌全体でゆっくりと扱き始める。 「う、あっ、焦らすなよ」 「了解」 攻介は催促されるまま濡れた指先を晴人の後ろへ伸ばしていった。一本を余裕で迎え入れるそこに、早急に二本三本と数を増やして内壁を這い回る。 「んっあ、そこ」 「ここ?」 「あんっ、そこ、もっと奥」 滅茶苦茶に指を動かす攻介にしびれを切らして晴人が一喝する。前立腺の在り処は自分が一番よくわかっている。見縊ってほしくない。攻介を待った半年間は延々と行われる焦らしプレイのようだった。今回ばかりは、皆まで聞いて、懺悔してほしいのだ。 |