三日前の話をしよう。 彼らは余りにも寡黙だった。休息と安寧を貪る者にとってそれは蛇足でしかないと言う。だから悟浄が揶揄したのはあくまでも月並みで、さして深みのない、言うなれば暇潰しの一環であった。無論、思案顔をしているわけではないし、だいたい思案顔なんてこの下等動物に出来たのだろうか。女にうつつを抜かして鼻の下を伸ばした下素顔なら嫌と言うほど見ている。彼は戦場でさえ腐抜けているのだから、もうとにもかくにもどうしようもない男だとだけ説明しておこう。 「お前らって二人部屋のときどんな会話してんだよ?」 「そう言えばあんまり喋らないですねえ」 「だろうな」 「なになに?八戒と三蔵って仲わりいの?」 「馬鹿、何言ってんだお前」 「そういう訳ではないんですけどねえ」 「馬鹿って言う方が馬鹿なんだし。河馬」 「なんだとチビ猿」 「このエロ河童」 後部座席が大きく揺れる。 間もなくして白竜は街へ行き着き、食料調達がてら二、三日滞在しようという成り行きを見せた。 聞けば天竺に次ぐ大都市だという。なるほど商いが盛んなわけだ。人の往来も忙しなく、肉も魚も脂がのって酒が進む。かどうかは三蔵が言ったのでよくわからないが、オレンジジュースは絶品だった。かどうかも嚥下の手段にすぎないのでよくわからない。一日目は八戒、二日目は三蔵と同室になり爆睡。三日目に商店街にある全ての食い物を胃袋に仕舞わんばかりに滞在日数をねだる。彼処の肉まん屋のねーちゃんが落ちないんだと悟浄が愚痴れば、三蔵が銃を乱射する代償に一日猶予ができた。 「あっ、ああ、んっ、は」 俺たちは付き合っているんだと思う。 「う、あ、ああっ」 思う、というのはあくまで希望的観測だ。 |