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□ソナタ第28番ホ短調
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SM注意。

それは満月の多い東ゴルトーでも格別に美しい、中秋の名月の晩でございました。小娘との対局に励まれている王に暇を出された私は、恙無く書物を読み耽るのに適した場所を求め、忙しなく宮殿内を彷徨っていたのです。階下の寝室に灯りがともっておりました。僅かに開いた扉の隙から、愛らしいピトーの声が私の耳を愛撫します。ああ、麗しのピトー、私の愛しい人。失敬。人間など取るに足らない。ピトーは私のカタルシスそのものなのです。

「さあよおくにおって。猫は嗅覚で犬に劣るらしいからニャ。君の鈍感な鼻に僕のにおいを覚えさせてあげる」

「ふっ…ふう、ん、んぅっ」

なんということでしょう。椅子に腰かけるピトーの股ぐらに顔を埋める輩がいます。なんと野蛮な、卑劣で、破廉恥、強欲で、分不相応な行為でしょうか。狡い。私だってできることならピトーの中心を貪り食いたい。嫉妬。それだけのことです。

「あ、んぐっ、ふうぅ、うんっ」

口淫の相手は見えない。どこからか調達した布と荒縄が目を、手を、脚を、快楽以外のすべてを拘束して不自由させておりました。粘膜の擦れて生じるいやらしい水音と、鼻を抜けていく甘い息が鼓膜にこびり付くようです。そう、これはもはや事故でなはい。僭越ながら私は自らの意思で、愛すべきピトーの情事を見届けることに賛同しておりました。

「こっちは触ってないのにもうイキそうだニャ」

「ん゙っ、んあ、はっんぐ」

「はやいのは足だけじゃないのかもしれないね」

思い当たる者があり、私はつい徒に顔を近寄せて中を窺う目に力が入ります。ピトーがその、見事なまでの脚線美を、余すことなく器用に、巧妙に駆使して、跪く先方の股間を蹴りました。雄ですか。目隠しを解いて現れた眼はよく見知ったそれでした。

「ヂートゥ」

そう呼びかける声に憎悪や軽蔑は含みません。私のスピリチュアルメッセージは、ピトーの並々ならない傾慕を感じ取ってしまいました。それと同時でしょうか。ピトーのこちらに対する認識を思い知らされました。私一匹の覗きなど、ピトーの円を持ってすればただの視姦に過ぎません。私は好色に利用されておりました。

「ピトー殿、っはあ、ん」

「うーん。ぺろぺろ舐められるのも可愛らしくていいんだけど」

「は、あっ、いいっ」

「もっと深く咥えてくれないと、いつまで経ってもいれてあげられないよ」

「ふぐぅっ」

こちらには一切見向きもせず、ひたすらに情事をひけらかす様は異様でした。当初殆ど見えていなかったはずのヂートゥが、ピトーの体勢の変化によって次第に暴かれていきます。小さなボトムスの剥げた下腹部は実り多く、透明の液体が塗されて卑猥だ。そこを楽しげに踏み潰し、優しい言葉を吐きながらも頭を押さえ腰を振るピトーはいかにも加虐的で、泣き崩れたように懸命に男根をしゃぶるヂートゥを慈しむ画は人体改造と重なりました。

「ヂートゥはこうすると本当にいい顔をするニャ」

「ひほぉほほっひぃ」

「僕に踏まれるのが好き?」

「ふんん゙、は、あっあっ」

「いいよ、いかせてあげる。そのあとにたっぷり、毛繕いしてあげるからね」

「んっ、んあ、あ゙、はあっ」


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