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□マッドロマンチスト
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「ん゙っ、ああっは、あんっ、に、づま、さぁん」

「んふっ、あっはかい」

「らめ、ってぇ、んあっ」

ペンだこのごつくて華奢な指が内壁を擦り上げる。圧迫感は拭えないが、痛みはそうひどくない。安堵したのも束の間、腹側の奥を突かれると身体がひきつけを起こしたようにびくびくと震えた。視界が揺らいでチカチカする。そうして気が付くと射精していた。

「あ、すいませんっ、口ん中に、俺」

「あーん」

「えっ」

「僕にはまだ早かったみたいです。飲むのはまた今度にします」

今度、という言葉も気にはなったが、それ以上にたった今口に出した俺の精液を手のひらに開けた行動に文字通り腰を抜かした。白濁の濃いところ薄いところ、エイジの唾液と混ざり合ってお世辞にも綺麗とは言えない。それをすでに張りつめた股間に塗りたくるエイジがなんだかボス戦に挑む主人公の形相で、抱かれたいとさえ思った。と言うか抱かれた。

「はっ、ああっ、ん、はあ」

「亜城木せんせ、きゅんきゅんです」

「はあうっ…新妻さんっ、前はぁっ、ら、めっ」

「は、亜、城木、せんせぇっ」

「んぅ、や、あっ、そこ…ふうっん」

「もっと、パコパコ、してい、です?」

「あうっ、ん、も、お願いっ」

「ふう、んっ、は」

「あんっ、ひ、いあっ」

エイジは空いたデスクに俺を押しつけ、前を扱きながら、最奥を抉り、後頭部を持ち上げてキスを交わしながら果てる玄人の所業を見せた。
なんてことだ。俺の理想をいとも容易くやってのけたこの男。男同士とは言え、なりゆきとは言え、初体験で挿入しながらキスをして同時にイくなんてロマンチックみすみす逃してなるものか。

「新妻さん」

「ピラーン!セクシーダイナマイトー!」

「あれ」

すでにこちらを完無視で原稿に取りかかる彼のプラトニックセックスに脱帽した。

「僕、帰ります」

「あっどーも。お気をつけてさようなら」

「お世話になりました」

「ん。待ってください、亜城木先生」

「なんですか?」

俺はげんなりというふうに視線を下げ応答する。エイジは椅子から舞うようにして面前に立ち塞がると、俺の顎を掬い、事もなげに唇を奪っていった。

「ヒロインは可愛くあるべきです」

それだけ言ってまたペンを走らせる。うなじの羽が代理で手を振るから、おとなしくはい、とだけ呟き、俺はこの身に起こったロマンチックが抜けきらないうちに全てネームから描き直そうと決めた。





「新妻くんがまたCROWの票を増やした」

「えっ、本当ですか?」

「今週号から出した新キャラのウケがいいらしい」

「どんなキャラなんですか?」

「今流行りの男の娘キャラってとこかな。今まで本誌には主人公の女装とかどぎついオカマはギャグで一定数いたんだけど、ここまで色気とかわいらしさを前面に押し出したのはほぼ初めてに近い。特にコアな女性ファンから高い支持を集めてるようだ」

「そうですか」

「なんでも初登場時のパンチラ、シルエットが妙にリアルで攻めすぎてるって評判らしい。女の子はわからんね」

「それは、なんと言うか」

「あーそう言えば編集長が褒めてたよ。亜城木夢叶も、キャラに色気が出たなって」

end.

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