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□好奇のリリー
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「こんばんはー」

金曜の午後八時。部員を先に上がらせてから、次の試合のイメージトレーニングも兼ねたフォーメーションチェック、練習メニューの改良を図っていたら日は暮れ、下校時刻はとうに過ぎてしまっていた。これを書いたら帰ろう。クマのマスコットが付いたお気に入りのシャープペンを走らせ、ページの下段まで一気に書き上げる。
唐突に扉が開いて、私の肩とクマちゃんが跳ねた。

「桃井さん?」

「こんばんは」

「なっ、なんの用よ。部活はとっくに終わってるし、黒子くんならもう帰ったわよ」

「ふふっ、知ってますよぉ。うちも終わってから来てますから」

「じゃあなんなのよ。私だってこれ終わったら帰るんだからね」

「ふふふっ」

桃井は苦手だ。机に向かい、気を紛らせるよう一心不乱に部誌を埋める私。それでも桃井が近づくのを知らずにいられなかった。

「リコさん」

「ふぁっ」

両肩からもっちりとした白い腕が伸びる。後ろから重みを感じさせない程度、ゆったりと抱きしめられ左の耳朶に熱い息が掛かるのを感じた。

「何よ。重いし、暑苦しいじゃない」

「んふっ」

「何笑ってんのよ」

「リコさん可愛いなあって」

「はあ?……っくう、ン」

制服の襟から耳の付け根にかけ柔い粘膜が這う。

「敏感なんですね」

「何が、したいの、よぉっ」

「分かってるくせに」

桃井のふくよかな乳房が無遠慮に当たっている。ワイシャツとブラジャー越しにも分かる勃起した乳首が、わざとらしく、私のホックとの段差に擦り付けられている。少なく見積もっても彼女より半年早く生まれた身、どういうことかはよく分かっていた。

「そんなのっ、知らな」

とは言え、悲しきかな桃井には嫉妬と同じくらい憧れと好奇心を持ち合わせている。構造は同じはずなのに、決して等しくはない。スレンダーと言うよりは肉感的な、カーブを成す柔い肌。胸の膨らみは女である意義を知らしめて引け目を起こす。

「……んぅっ!」

桃井が右から顎を掬う。やや強引にくちびるを突き合わせてからは、独特の水音が耳に付くような、深い接吻を延々と施された。

「っはあ、はあ」

「リコさん」

「あんた、黒子くんが好きなのに、どうして…」

「テツくんは優しいし、ミステリアスでカッコいいですけど、こういう好きじゃありません」

吐息のかかる距離で、互いに上目を向け合ったまま、桃井は私の髪を梳きこう言ってのけた。

「リコさんって年上なのにギリギリBで可愛いから、私いけると思うんですよねぇ」

「あっ」

私が苛立つより早く、備品の長椅子に押し倒され、桃井がファスナーを外しながら空いた手で私の胸を持ち上げて見せる。

「ほんと、ぺったんこですねぇ」

「ほっといてよ」


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