ほら、この前のトロスト区奪還作戦成功記念パーティー。一晩だけだったけど、普段抑圧された僕たちだからこその乱痴気騒ぎだったろ。作戦を実行した駐屯兵団や調査兵団だけじゃなく、憲兵団のお偉いさんまで来てさ。お陰で僕がバニースーツまで着てウエイターをやる羽目なったわけだけど、その中盤くらいかな。サプライズケーキなんか用意してあってね、暢気なもんだよ、まだ超大型巨人の一人も満足に駆逐できてないってのに、僕はその超大型ケーキを控室からワゴンで会場に運ぶ役目だったんだ。 「誰かいんのか?」 そこにジャンがやって来た。 「ジャン?」 「アルミン、お前か?」 「うん。どうしたの、こんなところで?」 ジャンはトイレの帰りだって言ってた。上司の絡み酒に疲れて、一人でこっそりふけれる場所を探してたんだって。 「お前こそ何してんだこんなとこで」 「僕は仕事だよ。もう暫くしたら、このケーキを会場まで運ばなきゃならないんだ」 「それでその格好か」 「あはは、似合う、わけないよね」 悔しかったよ。僕はジャンが好きだったけど、ジャンはミカサが好きで、どんなに僕が着飾って女に引けを取らないくらい可愛くなったところで、やっぱりミカサが好きなのには変わりないんだ。上手く笑えていたかはわからない。分かりきったことなのに、今更心を抉られるんだ。呆れるだろ。女になりたいわけじゃない。でも、ジャンに好いてもらうにはそうするしかないような気がして、偶然強いられたコスプレに自虐的な可能性を貪る。 「天使……」 それからのことはまるで白昼夢だった。だけど間違いなく、僕の今までの人生で一番の幸せで、これが夢じゃないなら、きっと誰かに自慢しておきたいと思った。気が付くと僕はジャンに組み敷かれ、ファーストキスを奪われていたんだ。 「ジャンっ…ふぁ、んぅ」 「アルミン」 上唇を挟み込まれて、開いた隙間からジャンの舌が押し入って来た。熱くて、苦しくて、恥ずかしいのと嬉しいのとが一気に押し寄せる。初めての感覚だったよ。僕が口を半開きにしたまま息を荒げていると、ジャンが歯列をなぞりながらべろを追いかけて来るんだ。 「んんっ……ん、っふ」 「はっ、ちゅ、んちゅ」 逃げても逃げても、ジャンは激しく僕を攻め立てた。唾液が頬を伝うのを拭わせてもくれない。必死に胸を押して、やっと解放されたと思ったら今度は履いてた網タイツの上からしつこいくらい脚を撫で回された。ジャンの手がガーターベルトに近づく度、過剰なまでに身体が強張る。 「……ン、ミンっ、アルミン」 「はっ、ジャン、だめ、待って」 「待てねえ」 |