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□イミテーションデート
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「あの魚はなかなかいけたニャ」

「それはよろしゅうございました」

「中身ばかり食べてしまって悪いね」

「とんでもございません。ピトー殿の幸福が私の幸福にございます」

街中に移動した二匹はウィンドウショッピングを楽しんでいた。ケヤキの並んだ大通りを手をつないで歩き、ピトーの反応を見て好きそうな店を優先的に回る。

「あっ、この首飾り、ヂートゥにぴったりだよ」

「勿体無いお言葉、誠にありがとうございます。失礼かと存じますが、ピトー殿はこちらの髪飾りなどいかがでしょう」

「いいねえ。付けてみよっか。はい、ヂートゥ」

「かしこまりました」

時刻は午後六時。慣れたのかローターもさほど気にならなくなっていた。意識すればまだ違和感は残るものの、会話に差し支えるほどでもない。びんびんに張り詰めていた男根もいつしか柔さを取り戻し、なんとか一時的な安泰をもたらすまで落ち着いていた。
ピトー殿も生きとし生けるもの中の一つだ。ヂートゥはとっくに褒美を諦めて、機会を見て取り出そうとまで思案していた。忘れていらっしゃるのならば、わざわざ自らが掘り起こすことはない。先のオーラも未熟な自分の凝が招いた早とちりで、今日は日がな一日、同族水入らずで過ごす貴重な休暇なのだと考えを改める。

「暗くなってきたニャ」

「日没が早まったのでしょうか」

「いや、今宵は月が見えない。これは夜の帳じゃなく嵐の前触れ。じきに雨が降るニャ」

「いけません。急ぎ屋内へ」

暗がりの中、ピトーを路地へと引きずり込む。いくら流行りの店から遠ざかってしまったとは言え、古民家と潰れかかった商店しかないようなスラムに上官をお連れするなど非礼に当たるだろうか。それでも雨水に晒すよりかはいい。止むまでの辛抱だ。俺に免じて、ピトー殿ならきっとご容赦くださる。ヂートゥは眉根を寄せて媚びるようにピトーを見た。

「ヂートゥ……」

「はっ」

ピトーはしばしば猫がそうするように、丁寧に腕を舐めそれで顔を洗っている。唐突に沸いて出た色香に眩暈がした。上目にヂートゥを一見し、その腕を首に絡めて今度はヂートゥの頬を舐る。

「まさか忘れているわけじゃニャいよね?」

「ピトー…殿……?」

「これ」

カチッという音と共に中で燻ぶっていた玩具が暴れ出す。バイブレータの刺激に仰天し、腰を抜かしたヂートゥをピトーが腕力で持って辛うじて起立させていた。ガクガクと痙攣して身悶える彼に、ピトーは嘲笑を含んだ悪い声でそっと耳打ちする。

「さわるよ」

「ひうっ」

言うなり、ベルトのバックルに掛けた爪が力任せに衣服を剥ぎとっていく。ヂートゥは堪らず顔を背けた。濡れた箇所が、風に当たり冷やされてなお、熱を持っているのが分かる。

「あ、ああっ」

「ニャーんだ。大通りに入ってからの反応が薄くて心配してたんだよ。僕の可愛いチーターがEDを患ったら大変だ」

「あっ、うう、それ、は」

「でも要らぬ心配だったみたいだニャ」

「はあ、うンッ、あっあっ」

「何回か射精した風だね」

「ひゃあっ、んぅ、ピトー、殿」

「泣くほどヨガってたし」

やはり、ピトーはヂートゥのフラストレーションに気付いていた。それでいて放置、観察し、人知れずプレイに興じていた彼の性的嗜好には脱帽するばかりである。そうとわかればヂートゥもまた、被虐性欲が擽られるというもの。取ってつけたような堅物キャラクターはセクシャルに大きく傾いた。


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