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□too fast to love
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「ピトー殿……っ」

俺の身体はそんな都合を顧みなかった。限界まで張り詰めた男根にはむしろピトー殿の寝室で、ピトー殿の匂いを嗅ぎ、名前を呼び、髪に触れるという行為さえ拷問のようである。俺はいけないと思いながらベッドサイドに跪き、無防備に投げ出された右手を握るなり舌を這わせた。

「ん、んふっ…ちゅ」

その背徳意識は俺の興奮を更に高め、舌の動きはもっと大胆に、好物の中指は口内へ迎え入れて音が鳴るほど丁寧にしつこくしゃぶる。息が荒くなるのがわかった。その息が、ピトー殿に掛かっていないか、それで起こしてしまうのではと思うからまた興奮する。

「あっ…あっあっ」

指を少しずつ、焦らすように下へ滑らせた。自分でやっているのに、吃驚するほど感じる。あやすように頬を撫でて、耳を擽り、喉仏の形を確かめながら更に下へ。

「んんぅっ……!」

乳首を掠めると少し大きな声が出てしまって、慌てて口を塞ぐとまた興奮して声が出ての繰り返しだ。

「あ、はあっ、は、んむぅっ」

爪先がとうとう剥き出しの性器に触れた。すみません。申し訳ございません。俺はその手を握り締めると多少乱暴に自身を扱き始めた。もっとほしい。もっとピトー殿がほしい。俺は目下にあるピトー殿の脇の下におずおずと鼻先を擦り付け、服の上から仄かに香る汗のにおいを思い切り吸い込んだ。いつもはシャワーを済ませて待っていらっしゃるから、こんなことは頼んでもさせてもらえない。一週間寝る間も惜しんで働いて、最後にシャワーを浴びたのはいつだろう。一週間前だったらいいのに、なんて変態染みた妄想が手の動きを加速した。

「んっ、うんっ、はふ、んンッ」

やってしまった。ピトー殿のまっさらな手を、俺の精液が纏わり付いて汚している。白濁の滴ったそれを見て、俺は強い罪悪感にびくびくと彼の顔色を窺った。

「むにゃむにゃ……」

ピトーは眠っていた。それで一気にたがが外れた。これだけして起きないなら大丈夫、後ろが疼いて仕方ないんだ。幸いピトーは疲れマラだろうか。股間がぱんぱんに膨れ上がってはち切れんばかりである。俺は早々にピトー殿の衣服を剥いでそこに顔を突っ込んだ。

「はあ、はっ、んぐ、っあ」

いっそう強く感じるピトー殿の香り。それを堪能して、鼻頭に先走りが付いたのを機に、裏筋からべろりと長い舌で竿を包み込んだ。

「ん、んあっ、は、あ」

一心不乱に舐めまわす。きつめに舌を絡めれば、搾られた先走りが裏筋を越えて睾丸のあたりまで垂れてきた。いよいよ堪らなくなって丸ごと自らの口内へ放り込む。右手は収まりきらない幹を支え扱き、空いた左手はアナルの奥を突いてことさらに中を拡げていた。

「はっ、らめ、もう……っ」

しかしそのいずれも俺に猶予を与えることはなかった。当然と言えば当然か。短時間で済ませられるよう十分すぎるお膳立てをしてきた。一度彼の手で達し、一物を咥えまだ繋がっていないのはむしろ褒められる所業である。

「うンンッ、あ、っかは」

俺は彼の上でしどけなく足を広げ、腰を浮かせながら慎重に、ゆっくりと彼自身を自らへ挿し込んだ。緩く浮かんだ静脈が中で小刻みに震える。隙を密着して埋めていくような充足感に、次の律動が及ばない。俺は放心しきっていた。

「あ、ンッ!?」

すると瞑想に耽る間もなく視界が反転した。薄ぼんやりとした照明の中にピトーの刺すような目つきが浮かび上がって、俺は慄いたが、ピトーは優しく諭すような口ぶりで俺に言う。

「僕を焦らそうなんて百万年早いよ」


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