「なっ……いつから起きて…!?」 「君が部屋を出たあたりかニャ」 「そんな……」 俺がここへ来る以前の問題だった。よくよく考えればピトーは円を絶やさない。侵入者を判別できるくらいだ。俺のスピードも、彼の能力を持ってすれば個人を特定する一つのデータに他ならない。迂闊だった。両腕を頭の上で拘束され、始まった性行為に一切の妥協はなく、ピンポイントで前立腺を抉るやり口は早々に主導権を我が物にしている。 「ローションを仕込んでくるなんてヂートゥは本当に可愛いニャ」 「ああっ、う、んぐっ、はあうっ」 「音ですぐにわかったよ」 「あんっ、あっ、ん、んんぅ」 「ああ、まだイっちゃだめ」 「ふぁっ、あ、やだぁ」 「一匹で気持ちよくなった罰だニャ」 「あっあっ」 罰、という言葉にさえ興奮する自分に興奮した。きっと始めから、俺はこれを望んでいたに違いない。ピトー殿にいたぶられ、罵声を浴び、辱めを受ける快感はまるで常軌を逸していた。彼の白くきめ細やかな尻尾が性器に痛いほど巻き付いて射精を阻む。苦しくて嗚咽が出るほどに気持ちがいい。 「そう言えば君は体臭フェチだったよね」 「へ?」 「実は僕も」 言いながら、剥き出しの脇にピトーがはり付いて故意に鼻息を吹き掛ける。ぞくぞくと肌が粟立つのを感じて、力んだところをぺろりと舌先で突かれた。 「知ってる?君は左の方が酸味が強くて、右は少し甘みがある」 「ああっ、ン、あ」 「僕は左の方がいやらしくて好きだけど、今日は特に、どっちも獣染みてそそるニャ」 「ひぃあっ、だめぇ、です、そんなことっ」 自分でも知らなかった性感帯をピトー殿に暴かれている。脇に集中する余り一度減速したピストンに油断すれば、今度はぎりぎりまで引き抜いて一気に貫かれる刺激に目を見張った。 「でも一番好きなのはここ。ヂートゥもそうでしょ?」 「ふぁあっ、い、アアッ」 俺の髪を掻き上げて項にかぶり付く。甘噛みした隙間からピトーの薄い舌が這い出てきて、粘膜を擦り合わせるようにちゅくちゅくと産毛を食んだ。身体が弓なりに反るのがわかる。 「すごくエッチな匂い…」 ピトーはそのまま二、三か所項を強く吸ってから、俺の膝を担ぎ上げスパートを合図した。 「たまんニャい……イクよ」 「あううぅっ」 行為はまた激しさを取り戻した。両乳首を爪と指の腹できついくらい摘ままれ、ペニスには相変わらずピトーの尻尾がきゅっと絡みついて離れようとしない。それに先端を抉る被加虐の愛撫も加えて、痛みに弱い俺は項に犬歯が触れただけで呆気なくドライオーガズムに達した。それを知ってピトー自身は中で質量を増し、より硬度の優れたそれは容赦なく内壁を擦り上げて漸く一度目の射精に至ったのである。俺も解放された鈴口からこもった熱を外気に撒き散らした。 「ヂートゥはせっかちだニャ」 「申し訳ございません」 「いれるだけじゃ到底君を愛しきれないよ」 王だけに飼われているはずのピトーが、二人きりの時とりわけ事後にじゃれついてくるのが好きだった。職務やサディズムを忘れて猫なで声を出す彼ならめいっぱい猫可愛がりできる。これが選民意識を持たずにいられるか。だから俺はひたすらに謝罪を口にしながら、筋金入りの愛猫家に猫を被せておく。 end. |