戦国BASARA

□無情に見えて...
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「…」



ぁ…おはようございます。藍朱様』

『…御早う』



「……」



『藍朱様、お出かけにございますか?』

『まあ…』



「………」



(領民)『おい、藍朱様だ』

『本当じゃ…』

『…』

『藍朱様ー、ええ感じに育ってますだー。片倉様にそうお伝えくだせぇ』

『…それは、何よりに御座る。確(シカ)と御伝え致す』

領民たちは(作り笑いに似た)笑顔で手を振ってきたが、無表情でそれに応えた。



「………」



(子供)『はやいよぉ』

『へへーんだ』

『オニなんだからちゃんとつかまえてよー?』

『あーん、まってよぉ』

ドタッ

『うわぁんあぁぁんっ』

『大丈夫か?』

『うわぁぁんっ』

素早く水筒の水を持っていた手拭いに掛け濡らし、血の滲む場所へと当てる。

『少しばかり染みるだろうが、我慢してくれ』

『――、』

『だいじょぶー?』

ゔゔん゙…』

『血が止まる迄は当てておくのだぞ?』

『ぁ…ありがとう、"お兄ちゃん"』

『…(苦笑) 今度は転ばぬようにな』

『うん』



「………」



(侍女)『何か藍朱様、ご機嫌斜めな気がしない?』

『そう?』

『そうよ。朝政宗様のお怪我の話してた娘(コ)たちは「心配するは愚弄すると見做す」とか言われたんですって』

『確かに…朝餉の時ほとんど手付かずだっだわ』

『どうしたのかしらねぇ』

(……)

『こらこら。お話する暇があるならお仕事してちょうだい』












「………はぁ…」

自室で脇差の手入れをしていた尚昌は、小さく溜め息を吐いた。

まるで自分の中にある不安を吐き出すように…。


「主…」

もう何度目になるのか、そう呟き溜め息を吐く。
それを延々と繰り返す姿は、いつものような覇気が欠けている。

天気はよいというのに心は曇り空だ。

にゃん

ふと鳴き声がしそちらの方を向くと、

にゃーん

どこから来たのか、庭先で一匹の茶色い猫が蝶を追いかけている。

んにゃ、にゃっ。
……にゃん?


視線に気づいたのか、猫はこちらを見ると駆け寄って来て、
「にゃん♪」と嬉しそうに尻尾を振る。
その姿はまるで犬の様だ、と尚昌は思わず笑みを溢した。

「其方(ソナタ)は何処から来たのだ?」

尋ねながら歩み寄り縁側に座ると、猫が膝上に乗って来て、

「にゃあん…?」

分からない、とでも言いたげに鳴いた。

「そうか…では迷子というものだな……いや、其方は野良か?」

「にゃーん」

「そうか。ならば毎日気儘に生きているのか…」

「にゃっ♪」

「それは、羨ましい限りだな…(伏し目)」

「…にゃあ…?」

「…ごめんね、気にしないで」

「にゃあん…」

「また、いつでもおいで(微笑)」

「にゃっ♪」

返事をすると猫は城壁に軽々と跳び移り、去って行った。

(…心配は無用……主は無事だ…)

そう自分に言い聞かせ、自分が出来る範囲の仕事をし始めると、ふと武田の忍が手紙を届けてくれたことを思い出した。

「確か此処に…、……此れだ…」






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