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わたしは美人と呼ばれる類のものらしい。そのせいか男は数え切れないほど寄ってくる。
きっと、今夜も。
「なあ、可愛いお嬢さん」
ほら、やっぱり。
わたしは一人で飲みたいのに。
「ごめんなさい、今夜は静かに飲みたいの」
そっと傾けると、グラスの底に沈むグレナデン・シロップが顔を出す。
わたしと同じ、緋色。
血の、色。
「一人で飲むなんて寂しいこと言わずにさ」
わたしの特等席は店に入ってすぐのカウンターの左奥。
一番端。
絡まれずに済むし、大体はマスターかバーテンが話しかけてくれる。
でも、何故だか今日は混んでいるみたい。
向こうが騒がしいから、ビリヤードでもしてるのかしら。
「一緒に飲もうぜ」
この男の目的ははっきりしてる。
わたしと寝ること。
「…悪いけど、人を待ってるの」
「じゃあ、その子も一緒でいいからさ」
口振りからして、わたしが女と飲みに来ると思ってるみたい。
でも、違う。
飲む相手なんていない。正確には、誘わない。
わたしなんか目じゃないぐらい美人で、流され易いから。
「しつこい男は嫌いよ」
「怒った顔も可愛いな」
埒があかない。ここまでしつこいのは久し振りに見る。
マスターが来るまでの辛抱だわ。
でも、どうしたら…。