biohazard

□They Are Triper!!!!
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「レオンさん…!!」

私は、心なしかいつもより温度が下がったように思える自室の中心で、攻略本を持ったまま、愕然と立ち尽くした。
この状況で考えられることは1つしかない。

レオンさんは、自分がゲームの中の存在だということを知ってしまったのだ。


きっと、この攻略本を見てしまって、わけがわからなくなって、部屋を飛び出したんだ。

そこまで分析して、こんな状況でも冷静でいられる自分に驚いた。それと同時に、すぐにレオンさんのもとへと動こうとしない足が信じられない。自分を張り倒したくなる。


ううん、
今はそんなこと考えてる場合じゃない!!


「レオンさんッ!!」


私は攻略本を放り出し、適当にサンダルを引っ掛けてアパートを出た。






出た、はいいけど、



「どこ行ったのか、見当も付かないよ…」

そう、手懸かりも何もないのに、レオンさんがどこに行ったかなんてわからない。
しかも、アパートから結構離れたこの辺りは街灯が少なくて怖いし…。ぼんやり蒼く光る星明かりしか、頼れるものがない。

「…一旦引き返して、アパートの近くにある公園に行ってみっ…っぐ!!」

振り向き様、私は全身黒ずくめの男に口をふさがれた。

「…っ!!?」

叫ぶことも出来ずに、冷たく硬いアスファルトに押し倒される。
なんか、こないだの強盗といい、最近男運悪過ぎだよね。
って、何呑気なこと言ってるんだ、私。

ほら、いざとなったら、レオンさんが来てくれるって、甘いこと考えてるんだ。今は、私がレオンさんのことを探してるのに。
なんだか、ちょっとした自己嫌悪に陥ってしまった。
くりっと丸い目に不釣り合いな濃い隈を滲ませた男は、全然抵抗しない私に驚いている。
こんな状況、普通なら打破出来ない。私の中にある、この少しの余裕は、レオンさんが助けに来てくれると思ってるから。なんて、馬鹿なんだろう。そんなご都合主義で予定調和な展開、漫画やゲームじゃないと、起こらn…


「さくらッ!!」

聞きなれた低い声が私の名前を呼んだ。
次に、地面を蹴る軽い音と、男が吹き飛ばされ、電信柱にぶつかる鈍い音が響いた。

「れ、れれれのレオンさん!!?」

「よくわからないが、そこはかとなくネタにされていることはわかるぞ」

久しぶりのこのやり取りに、自然と顔の筋肉が緩み、へらっとしているのが自分でもわかる。
しかし、次の瞬間、背筋が凍った。
レオンさんの背後で、先程の男が反撃に転じようとしていたのだ。

「このっ…邪魔しやがって!!」

男は怒りを滲ませて叫びながら、拳を繰り出す。それだけでも、息をのんだというのに、レオンさんはその攻撃をモロに受けたのだ。

「なっ、何してるんですか!!」

「っさくら、隠れていろ」

「でもっ…、レオンさんは!?」

「いいから!!…黙って耳ふさいで目閉じて隠れてろ」

あまりに必死なその形相に、私はただ言う通りにするしかなかった。





―5分。




―10分。




もういいかな…?
そう思って、耳をふさぐ手を退ける。
すると、

「っ気持ち悪ぃな!!お、覚えてろ!!」

悪役お決まりの台詞を吐き捨て、男が去っていく気配。
まあ、そんなものどうでもいいんだけど。気になるのはレオンさんだ、気持ち悪いって、何がだろう?私は電信柱の影からそっと出ていった。

「レオンさん、大丈夫で…きゃあっ!!」

「あぁ…、さくらか…」

壁に凭れ、切れて血が滲んだ唇を不敵に歪ませるレオンさんは、ボロボロだった。
前述の通り、唇は切れているし、汚れてしまった服は破れている。押さえているお腹も、きっと殴られたか蹴られたかしたんだろう。目の焦点すらあやふやで、かろうじて立っている、という具合だ。

私はふらつくレオンさんを支えながら、
なんで、どうして。
そればかりが頭の中をぐるぐると回っている。
だって、レオンさんは強いのに、あんなの簡単にやっつけられるはずなのに。

問い詰めたかったけど、レオンさんを思うなら、まずは手当てだ。私は、なんでこんなことになったんだろう、と込み上げる嗚咽をこらえながらアパートへと足を急がせた。






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