Gift
□キリリク集
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*となり*
――――
最近、僕の心の中につっかかるものがある。
それは何なのか、僕には全然わからなくて。
……なんて、『わからないふり』をして逃げている自分がいる。
本当は分かるんだ。
はじめは全然気にならなくて、でもだんだん気づきはじめて、嘘だって思っても、どんどんそれが確信に変わってゆく。
「狩屋くん」
空が群青色に染まった帰り道、ゆっくりと彼の名前を呼べば、彼もゆっくりと僕に振り返る。
「なに?」
伝えなきゃ。僕が思ってることを。言わなきゃ。
一言、たった一言だけ。『離れないで』って。
…………でも。
もし、そんなこと言って呆れられたら?
狩屋くんに嫌われたら、僕はどうすればいいんだろう……。
人から嫌われるのは慣れたはずなのに、狩屋くんには嫌われたくないと思っている自分がいる。
考えれば考えるほど、怖くなって、とうとう僕は立ち止まって泣き出してしまった。
「輝くん!?どうしたの!?」
嫌だよね。いきなり泣かれても困るよね。ごめん。ごめんね狩屋くん。
「うぅっ……ひっく、かり、やくっ……」
「大丈夫!?」
「……無理…だよぉ……」
そうだよ。無理だよ。狩屋くんがいないと。僕、生きていけないよ。
「はな、離れないでぇ……」
「輝くん?」
「一人にしないで……。僕、狩屋くんがいないとダメだから。だから、離れないでっ……」
「輝くん?何、言ってるの?」
やっぱり、狩屋くん引いてるな。でも、ここまで来たんだもん。伝えなきゃ。
「狩屋くん、最近、いつも霧野先輩のところ行って……だ、からっ……うぅっ……」
「輝くん……。分かったから、泣かないで?」
「うん……すみません……」
狩屋くんは、僕がなんとか泣きやむまで待っててくれて、それからゆっくりと話し出した。
「ごめんね。はじめはちょっとヤキモチ焼かせようとしただけなんだ。でも、だんだん相談に乗ってもらうようになって……。本当に、ごめん」
「そうだったんだ……。僕の方こそ、ごめんね。変な勘違いして」
「でも、一番好きなのは輝くんだから。これからもずっととなりに居てね」
「狩屋くんこそ。だよ」
「じゃあ、帰ろっか。暗くなっちゃったし、家まで送ってくよ。」
「ありがとう」
僕がそう言い終えると、狩屋くんは自分の手を僕の手に絡めてきた。
「俺の場所は、輝くんのとなりしかないからさ。」
「狩屋くんっ……!僕もだよ」
狩屋くんが言ったことが嬉しくて、僕は狩屋くんと繋いでいる方の手をぎゅっと握った。
胸の奥が、ほっかりと温かかった。
*end*
ほんわかしたマサ輝でした。
読んでくださっている方もほんわかしてもらえたら嬉しいです。
詩歌さん、キリリクありがとうございました!