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□ケーキより甘い恋
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外はまだ肌寒く、岩鳶町全体は雪がまだ残っていた。
そんな中、遙のお家では凛の誕生日パーティーを開いていた。
「凛ちゃん!!お誕生日おめでと〜!!」
「渚!!お前俺の上に乗るな!重いだろうが!!」
凛は渚を押し退ける。
何故なら、既に目の前にいるハルの視線が痛いくらい伝わっていたからだ。
遙は眉間にシワを寄せながら、ずっと凛を睨んでいた。
それもそうだろう…、何故なら二人は去年の冬に付き合い始め、まだまもなく嫉妬の深さは大きい。
遙は特に口では言わず、行動で表すもしくは眼で合図をするタイプなので尚更だ。
自分も渚のように凛に抱きつけたらと何回考えたか…。
それを見ていた真琴は、そっと遙に呟く。
「ハール、顔が怖いよ!今日は凛の誕生日なんだから、ちゃんと祝ってあげないと!」
「わかってる!だが、渚ひっつきすぎじゃないのか!」
「ははは…。まぁ…そうだね…」
真琴は苦笑いするしかなかった。
そして、何か話を変えようと考える。
「あっ!凛!はい!プレゼント!!」
真琴はとっさに凛にプレゼントを渡す。
「おっ…、おう。サンキュ!」
真琴はオシャレ好きなので、凛に帽子をプレゼントした。あまり派手すぎず、シンプルなベージュにちょっとしたアクセントに黒のリボンが飾ってあり左側には小さな羽がついた物だった。
そして、続くように渚と玲がプレゼントを渡していく。
最後に遙の番がやって来た。
だが、遙は何もせずただ固まっていた。
「...ハル?どうしたの?」
真琴は心配そうに見つめる。
「ハル!どうした!照れてねぇで早く出せよ!」
凛はせかすように言う。凛にとっては遙からのプレゼントが一番楽しみにしている。
「照れてない。ここで出していい物か迷ったが仕方ない」
遙は大きな箱からある物を取り出した。
箱から出たものから、微かに見えたフリルの付いた袖口で凛は即座にわかった。
あの秋の時に嫌と言うほど、着させられた物。
「!!!!」
凛は驚いた表情をする。
「てめ!!ハル!!なんで誕生日の時に、メイド服なんだよ!!」
「今後お前が職を見つけるときに、着るとき用だ」
「てめぇ…、今後水泳界でやっていけねぇって思ってんのか!!」
「そうじゃない。最初の時は水泳だけでは、生活出来ないだろ。
あっちじゃそんな甘くない事も知っている。そんな時に役立つ」
遙はまだ先なのに、今後の事まで考えていた。
凛は呆れながら言った。
「てめぇは、俺の事どんな眼で見てんだよ」
凛はメイド服をまじまじと見つめた。
遙がどうやってこの店に入り、購入してきたのか考えていた。
そんな中、ふと…真琴は遙の膝の上にある箱に目をやった。
その箱は、小さな長方形の箱に、赤のチェックで包装されていた。
しかも、ちゃんとリボンまで付いている。
『ハル…、誰かに渡すのかな…?いや…、ハルには他に渡す人がいないはず…』
遙は突然左手をさっきのプレゼントを握った。
その行動を見ていた真琴は、誰にあげるのかすぐに解ってしまった。
『クスクス...ハル、ちゃんとプレゼントの用意してるんだ!』
真琴は凛が冷と渚に夢中な間に、遙の耳の側まで行く。
「ハル、ちゃんと伝えたい事は伝えないといけないよ!
二人はいつも伝えたい事は伝えず、後回しにするからお互い歯車が合わなくなるんだよ。
今回は凛の誕生日なんだから、一度は素直になってもいいんじゃないかな?」
「............」
遙は真琴の顔を見つめた。
確かに真琴の言う事も一理ある。
いつも俺達は喧嘩 ばかりしていて、お互い素直に言えないことが多々あった。その時はいつも、凛から折れる。
俺はいつまでも素直になれなかった。
「さて...」
「...どうした、真琴!?」
凛は先程まで冷と話していたが、真琴が急にガウンを来はじめたので
そちらに目が完全に向いた。
「ああ…、俺達、少し用事があってね。せっかくの凛の誕生日なのにごめんね」
「冷、渚行くよ!」
「えっ!?こいつらもか?」
「うん、ごめんね...。渚!何してるの!行くよ!」
「ええー!行くって聞いてないよ!!」
渚は困ったように眉を潜め問いただす。
だが、冷はその逆で真琴の目を見てすぐに察した。
「そうでしたね。渚くん!!さぁ、行きますよ!」
冷は渚の意見を耳に入れず無理やり引っ張っていった。
最後に真琴は、何も言わず遙の肩に手を置き、にっこりと笑いながら部屋を後にした。
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