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□いなくなるな!(宗凛)R18
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「ごほっ!ゲホッ!」

「ああ…、クッソ!何で…よりによって風邪なんて…」

朝201号室では咳の音が止まなかった。
凛はどうも身体を壊したらしい。
頬は薄紅色に染まり荒い息をたて寝込んでいる。

「だから、言わんこっちゃない。あんだけ薄着で寝るなって散々言っただろ」

「うっせぇ…ゴホッ!ゲホッ!」

「とにかく今日はゆっくり休め。部活がないのが幸いだな」

「ああ…、そうだな」

頭がボーッとしているせいか、宗介の言葉が殆どわからなかった。俺は宗介に言われるまま大人しくしていることにした。

「何か食べ物と飲みもん持ってきてやっから何がいい?」

宗介は優しく俺の髪を撫でながら微笑む。宗介の手が冷たくて心地良すぎて自分で何言ってるのかわかないくらい勝手に口から本心を伝えていた。

「…にもいらない。…ここにいろ…宗介」

「はは…何言ってんだ。せめて飲みもんくらい飲め。ちゃんと帰ってくっから大人しく寝てろ」

そう言って宗介は額にキスを一つ落とし部屋を後にした。




深い眠りについてから何時間経っただろう、いや、数分かもしれない。その深さは計り知れない程の深い眠りについていた。

「…ここ…何処だ?宗介?」

辺りは真っ暗だった。机もベッドもなく数メートル先すらも真っ暗で何も見えない。まるで深海に居るみたいだった。

「そーすけー!居るんだろ?返事くらいしろよ!」

ただ真っ暗な何もない道をひたすら歩きながら彼の名を呼んだ。

「ったく…、何なんだよ!何にも見えねぇじゃねぇか!宗介はいねぇし、これじゃ似鳥も桃もいねぇよな」

ブツブツと呟きながら歩いていると、奥の方から一人見た事のある後ろ姿が見え、凛は少し安心しながら彼の方へと近づいて行く。

「おい!ハル!こんな所で何してんだよ?お前も俺と一緒で迷子か?」

「誰だお前?」

「はっ?何言ってんだよ!笑えねぇ冗談はよせよ!俺だぜ?俺達一緒に泳いでる仲だろ?」

凛は内心焦っていた。

「何の事だ?俺はずっとフリーしか泳がないし誰とも泳いでなんかいない!」

遙が冗談を言えるような玉じゃない事は重々わかっていた。だけど言葉がそれ以上出なかった。誰かがそれ以上何も言わせない様に俺の首を締めている感覚だ。
遙はその後何も言わずその場を立ち去って行った。

また、真っ暗な道すらない道を歩いていると、さっきと同じように前に人が歩いている。

「あれってもしかして宗介か?」

暗すぎてその姿は捉え難いが背の高さ、髪の流れそして歩き方など何処からどうみても宗介だった。

「良かったぜ!宗介ずっと探してたんだぜ!ここ何処だか知らねぇか?」

凛は宗介の肩に手を乗せ振り向かせた。
だが、振り向いた宗介はいつもと違ってエメラルドグリーンに光った眼は鋭く誰にも寄せ付けない凍てつくような眼差しだった。

「そっそうすけ?どうしたんだよ?」

「邪魔だ、気安く俺に触るな」

そして、凛の手を払いのけた。

「そっ宗介?お前までどうしたんだよ?俺何か悪い事でもしたのか?」

「何かしたもしなくても、お前は一体誰なんだ?会ったなら名乗るってもんが筋だろ!」

俺は無性に腹が立った。だから、凛は宗介の胸ぐらを掴み怒鳴った。

「っんだよ!ハルもお前も!何で俺の事知らねぇんだよ!」

「お前だけは!お前だけは覚えてくれてると思ってたのに何だよ!俺達の関係は何だよ!ただの遊びだったのか?」

宗介は冷静を保ちながら凛の両腕を取り

「知らねぇもんは知らねぇつってんだろ!それに俺は…」

「今までずっと一人だ!誰とも組まねぇし俺は一人がいいんだよ!とにかく俺の前から消えろ!邪魔だってさっきから言ってんだろ!」

宗介はその言葉を吐き捨てその場から離れていった。
凛は「消えろ!邪魔!」の言葉が心に矢が突き刺したようにその痛みでその場で崩れた。

『どうして?宗介だけは…宗介だけは…』

頬からは勝手に涙が零れた。

『宗介…宗介…』

「そーーーすけーーーー!!!行くなーーー!」

俺は最後の声を振り絞り宗介の後ろ姿が見えなくなるまで大声を出した。
決して振り返らないとわかっても叫び続けた。

「宗介ーーー!」
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