別じゃんる


ただいま 阿幾に夢中―――><

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09/30(Fri) 15:45
※勾阿幾4話〜かこねつぞう〜※



「…見ぃつけた」

「勾司郎…」

まさか日向の追っ手とは。面倒臭いことには変わりないが…と溜め息混じりに構えを解く。

「悪ぃこた言わねえ、一緒に来な」

褐色気味の肌に黒のグラサンが光る。見た目長身でガタイの良い…悪そうな兄ぃちゃんだ。
更に日向の実力派の隻で、次期当主候補だったか。だが厄介なのは遠い記憶――初めて遭遇した時の印象で。

「何のつもりだよ…ナンパ野郎」

「久しぶりだな、阿幾」

黄昏に影濃く佇むその標的目掛けて宇輪砲を送ると。
めり込んだ地面の真上、相棒の鋭い切っ先にフードをヒョイと引っ掛ける要領でそれを避けた男が飄々と浮いていた。

「相変わらず狙いいーよね」

ぷらーんとぶら下がりながらそう宣う…が次の一撃でそんな標的は虚を突かれ、地へと叩きつけられた。

「ぐっ…う!」

素早く身を切り返し、コンクリ迷路へと誘う――後ろには相棒暗密刀が付いて来ていた。

「これじゃウチの裏山と変わらんね…」

――だったら普通の道歩きゃいいだろ

「ハァッ…ハァッ…うわっ」


そう、初めて勾司郎を見たのは裏山で…所謂迷子になっていた時だった。

「う〜…匡平ぇ」

酷く奥深くまで来てしまっていた。まだ慣れない内にはしゃぎ回ってクタクタなのもあり、少々ながら泣きが混じる。
思わず呼んでしまった名前…が構わない。誰も居はしない。


「危ないな…」

「!?」

餓鬼がこんな所に一人でさあ。といきなり間近に現れた気配に身構えるも、相手は妙な起動音のそれから下り此方へと近づいてきた。

「…!!」

「っと!」

ガキィン。実体化させないままで見舞った刃は、瞬時に出現した巨大な案山子に難なく受け留められた…既に背後は木の根元。
日向の隻だろうこの青年は笑いながら、ギッと睨む此方の蟀谷脇にガッと玉刀を突き刺し…覗き込んできた。

「そう怖がるなって」

無茶だろ――が男は屈んでそう耳元で囁くと、動けず冷や汗の伝う頬へと徐に手を触れた。

「暗密刀…確か枸雅阿幾…だっけな?」

「!」

「俺は勾司郎。宇輪砲の隻だ…いずれ――ま、いいか」

言いかけるのに、は?と片眉を上げた次の瞬間、クイッと顎を持ち上げられ――

「ば…」

「気をつけなよ。阿幾ちゃん♪」


額にそっと落とされた感触は、幼心ながら妙に残っていた。
その後匡平が来て――

「ったく、面倒臭い相手が…」

逃れた先の屋上で、そう独りごちた。


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09/24(Sat) 13:53
※おっと匡阿※





何をしようとも、何を願おうと…決して光に届かないのならば。

「其処に落ち着くしかないだろ?」

「阿幾…」


本当は、いつかも必死に願った頃がある。いよいよ以てこの身を取りこんだ、闇の暗さに慣れると…もっともっと奥深くから此方へと這いずってくるもの…影。
微動だにせずにいると、それはドロドロと周り中に広がり僅かな視界を残すばかりとなった。
何かは分からずとも、窺い知れない…とてつもないものだということは知れた。
少しでもそれに触れた瞬間悪寒が走り、如何ともし難い激痛が駆け抜けた。

「何だ、これ」

だがこの感じ…同じ感覚を前に受けたことがあった。直接心へと侵蝕して、一番弱い所を探って抉り…喰らう化け物に。
相棒は酷く傷つけられ、己は隻の資格を剥奪された――かの四つ脚事件だ。
もう一人の日向の隻も怯えおののくばかりで地に倒れ臥し…ただあの光景を目に焼き付けていた。

「匡、平…」

幼馴染が覚醒した。窮地に追い込まれ、一瞬触れた絶望の淵から…案山子の閃光と共に立ち上がり。
全てを焼き尽くした後も茫然と立ち尽くす――炎と硝煙に塗れる中で見たその姿に…言いようもなく、心が酷くざわついていた。

――お前は矢張り持っていた…多分俺のよりも厄介な化け物を


「…でもなあ」

普段は温厚で少しじれったい所のある幼馴染みのその一時の覚醒から…己もまた少しずつ変わっていった様に思う。
立場も変われば己の様な余所者への人当たりは激変する…そういう村だった。


――もう、いいだろ

心を喰らう闇。その正体を何となく感じていた。


「く…っそぉ」

目を閉じる。ドロドロという黒い流れと、自身の脈打ちとが呼応するようだ。
暗がりに一つ思い浮かべるのは…あの光。
それまでの日常をひっくり返し、手を差し出し空へと誘ってくれた唯一のそれへ。


「願ったさ。何度もな」

ハッと見開いた先、あと少しで届くという所で――心の何処か奥で一部がメリメリと音を立てた。



「…」

「ま、所詮昔のことだ。6年も離れてりゃいろいろ変化してくる。それにこれは」

俺が勝手に持ってたもんだから。と嘲笑すると、匡平はじっと見詰めながら傷だらけの頬へとそっと手を触れた。

「つーか。危なっかしーなあお前は相変わらず」

「ぁあ?」

「食いっぱぐれてたり狙われたり…今みたいに」

「状況を楽しむってね」


――お前が居ると分かってるからな


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09/23(Fri) 14:10
※阿幾靄…GX今月号バレと続けgrks※





「せめて聞かせてよ。どうやって知り合ったの?」

「…今から考えりゃ、たわいもない話だよ」


――ああ、そっか。その頃から匡平は…


阿幾を。立ち上がりかけたのを引き留めたい一心でそっと尋ねた…堪らなかった。
器師である自分を頼ってきてくれた。
やっとまともに此方を向き、その双眸で見つめられて名前を呼ばれた時は心底驚き…そして嬉しかった。

「封印を解いて本調子に戻してやってくれねぇかな…暗密刀を」

――いいよ。やったげる

あの丘から見た――彼の笑顔が過ぎる。決して変わることのない夏の穏やかなその憧憬は。
どこか遠くへと…強く願いを誘う。想いを馳せ見上げる空は何処までも澄渡り、この身もまた遥か時空をも越えて――その願いとは。

「だめだ」

俯いたままそう言い切る。覚悟はしていた…彼にはそれしかないのだと。
だからこそ自分は…力になれない。歯痒さに、目の前がうっすらと霞む。

「そうか…」


彼を誘う匡平の詞はどんなにか温かで、彼の心に沁みたことだろうか。時折覗く羨望と強過ぎる執着は…元々はこれ程に純粋で微笑ましいものだった。

――抱き締めたい

愛しさが募ると同時に寂しさが広がる。
ずっと想い続けていた…荒んだ運命の中に居て尚微笑む彼の姿を――共にありたいと。

「あ、わり…ちょっと…(Pi)」

後の沈黙を破った電話に慌てて出る。
それには、幸いにも目の前の男は一瞬眉を顰めるのみで直ぐに立ち上がる素振りはなかった。

「アレ?切れちまった」

――桐生…奴が今アレの隻か

「ったく蒼也の奴!…こりゃヤバいぞ…早く」

「さて、と」

「…行くのか?」

「ああ。忙しいとこ悪かった…」

スッと今度こそ立ち上がり踏み出す…その背をじっと見つめる。

――待ってよ

微風が彼の周りに吹き始めていた。

「阿幾っ」

「!?」

ドサッ…ドタンッ…盛大に転げた。
縋るように伸ばした手が、彼の出現させた相棒へ飛び乗る寸での所でその脚を捕らえた。

「…痛っ」

「匡平は今弟を救おうとしてる」

ずりずりと…脚から胸の辺りまで腹這いで彼の上を移動する。見開かれる双眸に、サラと髪を梳いた。

「ね、このまま逃げ出すの?」

「…匡平」

胸の上を滑らせ、ふと零された呟きに…首もとへ頭を預けた。

「私はお前達に…また二人で空を飛んで欲しいんだ」

「…」

告げる靄子の背に…彼の気配がそっと降りた。


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09/22(Thu) 23:44
閑話休題※8話アニメ寄りとくー阿幾みたいな※





――此処に居なさいよ。どーせ行く当てないんでしょ?

「…フン」

「出かけるの?ハンカチ持った?携帯は?」

「…はぁ?」

身内かよ。全く、煩い女だ――スッと外へ抜け出ると…ギラギラと陽射しが肌を焼くようだ。
情報収集に教わった図書館へと向かう。画面を見続けるのは苦手で…その膨大さが中々に煩わしかった。
6年間の空白は、いろいろと支障をきたすだろうと思われたが…差ほど感じない。元来からの性分に加え、あらゆることへの無頓着さに磨きがかかった気がする。

「コレでいいか…」

案内されたコーナーにて、数刊手にした色褪せた新聞から、めぼしい記事を探して目を通していると――視線を感じた。

「…阿幾、さん?」

「…!」

また女か…しかも、あの匡平の側にいる女。軽く見やり、席を促すと…見つめるその目が何かを知っていると告げていた。

「…貴方と先生のこととか」

「いいぜ?続けなよ…」

怯えているのか。殺人鬼を前に…複雑な表情を見せる――あの女も、一度でもこんな顔をしたろうか等と過ぎらせる。
幼馴染みの二人のことを知ったという目の前の女が、そうして徐に口にした詞に思わず――刃を突き付けていた。

「っ…まあいいさ」

素直な謝罪に、だが刃はそのままに話を続けさせる。と、ふと浮かんだ妙案に…些か狂気を孕みつつ女へと刃を進めたが。
いいタイミングで玖狗厘に邪魔され、場所を移動した。

「へぇ…腕上げたんじゃないか?」

「…っ」

懸命に集中して攻撃を仕掛ける姿に、此方もそれなりに相手をする。
案山子の存在理由は隻に依る…そしてこの子供は人助けの為だと言い張った。
それに一笑しつつ、不意を食らった暗密刃の触手を絡ませて吹っ飛ばす。
案山子の力は昔から殺戮と破壊にだけ使われてきたのだ…何故か。

「中身が人間の心だからさ…」

そうだ。だから彼奴とて分かっている…目を背けさせやしない…絶対に。
強張る二人にそう告げ、足早にその場から去った。


「よ!お帰りぃ」

「酒臭ぇ」

「良し良しご苦労♪」

テーブルへポイと袋を置いてソファに転がる。いきなり鳴った携帯にうんざりしながらも帰り道に寄ったのだ。

「ホレ!!」

「…」

この酔っ払いが。と気怠げに伸びをしつつも受け取る…殆どジュースと変わりはないそれ。

「ぷはぁ〜」

「…」

しなだれ掛かる酔っ払いから顔を背け一、二口とグビグビ…いった。


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09/22(Thu) 13:34
※阿幾萌…語り?第4話編※


――他愛もない話さ…



「…っん…」

――女?何で

それにこの、今頭を預けているのは大きなごみ袋…一つや二つではなく周りにゴロゴロと転がっている。
而して、最早この身もそれ等と一緒にされ打ち捨てられている訳だったが。

――よく寝てたな…しかも、何だよこりゃあ

酷い格好だ。パンツ一丁で手足を縛られ、しかもガムテで口元を封じられている…滑稽すぎる。
一晩眠りっ放しだったらしい。空気感と漏れた光の具合から昼すぎだと分かる…このテのには敏感だ。
敏感になった。元々のセンスは人より抜きん出ていた訳だが…何年もの間の幽閉生活でまた研ぎ澄まされたらしい。
6年は長い――退屈を通り越して、土に還りそうになる…つまり、些細なことやらいろいろとどうでもよくなった。
期待もせず、されない。けれども因襲にだけは雁字搦めにされ――厄介者と蔑まれ、生まれた狂気すらも使い道がないまま。


――眠い…

痛む身体の軋みと重さに、ぐったりと力を抜いた。状況に違いはあれど…こう転がっているとあの場所の感覚がしてくる。
力を気力を奪い、思考力をも鈍化させる…長い長い時間のそれが。
薄れさせて命の根本を削ぎ落とす。変えられない、変わらない時間だけの繰り返しにどれだけ窶されたことか。
馴れとは恐ろしい。今となっては、もう馴れっこで…直接的な危険でもなくば何とも感じないのだから。

――それに

急激な疲労にまだ身体が馴れないのか否か…その為自然と動き出すまでに少し身体を休めてやっているのもある。

――ただ…

匡平を前にしたときだけは、スイッチが切り替わるのを感じる。だから唯一の幼馴染み、匡平以外のことには受け身になりがちな所があるかもしれない。

――あーやっぱ眠い…寝るか。ちょっとだけ


こんな…得体の知れない気絶した男を拉致して身包み剥がして縛って監禁までする…変質者がどんな奴なのか。
どんな目的があるのか――スパッとやるのは、それを聞いてからでも遅くはない。


――而して後にその見解を軽く改める羽目になるのだったが。



「ハロー?」

「…」

「寝てる…?」

軽い夕食とシャワーを終えてから様子を見に、拉致犯こと家主の久羽子が戸を開けた時もまだ爆睡中だった。

「…っん」

「おっと…喋ってくれっかなあ此奴」

眠りこけるその、髪のかかる頬を軽く叩く。

「ま、いざとなったら特製のコレでなかせてやるわよ♪」

「ぐー…」


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