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□※〇〇〇モードSK※
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※ギャグSK※




「……何をしました」
「…あ。…おはよう、さん?」
「この私が…動けない、なんてことっ」
「あー、まだ痺れてんのか…でもじきに直るってよ?」
「…どういうおつもりですか」
「だって、オメー絶対ぇ暴れっから」
「…ふっ――…う、ぅっ…んんっ、……全く」
――あと少しの辛抱、って。何してくれてんですかあなたは
未だに残る気だるさに、全身麻痺の如くに力の入らない手足…その心許ない感覚には吐き気がする。
而して心無しか上気して、ほんのり熱に色めくという状況。
更に背に腕を回されての、後ろ手拘束。普段の否、身体の自由が効く常人であれば何のことはない程に…緩い。
今はされど、僅かな身動ぎすら叶わない状況でも。それはあと数分で意味を為さぬものになる。相手曰わく、正しく只の趣味幹、嫌がらせにすぎないらしい。

「良かった…」
「…何がだよ」
見下ろしてくるニヤニヤ顔に、あからさまに不機嫌だとばかりぷいと顔を逸らし。再び双眸を閉じては、来るべきその時間をひたすら待つ。
その折にも、間近にある工藤の体温その気配に密かに身を竦ませつつ。仄かに称えられた、その息遣いに呼応するかの様に響く…己の鼓動が恨めしいとさえ感じてしまったのは。

――軽い事故に遭った、ということで…いいさ


甘かった…そう過ぎらせた時には、それは既に蕩けた舌の上には残ってはいなかった。
急速に己の意識に浸透していく空虚感。まさかの己をも追い詰めた、この類い希な物質の分析の仕様もないことに舌打つ。

鈍る感覚に、その嫌悪感から伏せられた瞼は思いの外重く…それきり開かれることはなかった。

てっきりそう…いつものアレ。闇の中の、不埒で何の味わいも可愛い気も無いその応酬演義と決め込む筈だった。
いつもその手を交わし、引きつけて…手放す。その繰り返しで綴られる一つの惰性的宵物語。
それは詰まらなくてはならない。甘い余韻を引き摺ること等まもまならぬし…その必要はない。

――…必要ない、か…けど、今回はそういう訳にはいかねーんだよな
僅かに顰められた眉、その額に掛かる前髪をサラと梳き。
この眠れる怪盗に名探偵と呼ばれるその男は、彼の人の瞼のすぐ上にそうっと口付けた。

――…これでよし、と…何か案外あっけねーもんだな
いつもなら、殊に工藤の仕込んだ手等見た瞬間にその種の全てを…淡々と。且つやんわりと嫌みを付け加えつつ、この怪盗は解き明かしては笑って終いだというのに。

「ときに単純すぎる、つーか…彼奴のことだと丸っと信用とか。バカだろっ…ったく」

―――あ、それはキッドが置いてったヤツで
―――頂きます…っ ぁ、こ、これはっ――(バタッ)

「…まさか譬えそれが毒でも、此奴は飲むんじゃねーか…?」
最も、互いで仕合う時には決してそれと気付かれはしまいが。殊更この怪盗の、共にある相手を欠片ほども疑っていないという事実を目の当たりにしては。
さしもの工藤も、ここまでとはと低く唸りつつ……合掌したものだった。

――…お。…起きたか
チュ。と何度目かの口付けを贈ったその瞬間。覗き込んだ単眼鏡の奥、スゥッと静かに相手の瞼が開かれた。
見慣れたとは決して言えない、その深く輝きを誇るかの様なアメジストに…思わず見入る。
身動ぐことも叶わないのは薬と…軽くとは言えその両肩をグッと押さえつけ、両脚で腰を跨いでいるから。
吸い付く様な視線を受け止めたまま。暫ししてこの異様な現状に、一瞬戸惑いの色も露わにした怪盗は口を開いた。

「……一体何をしました」
僅かながら強ばらせている声音に、而して工藤は素っ気なくおはようと返した――その変化への期待に心躍らせながら。

「…動けなくなるなんて、ない筈なのですが」
この私が、と。淡々と、而して語気を強めつつ。やんわりとした責め文句…じわじわと来る、工藤の好きな怪盗節のそれは健在で。

「まーあと数分程度で治るみたいだってよ?」

――だからそう不安がらなくてもいいぜ?
――…誰が、不安だって誰がっ

「まだ痺れてっか?…なあ、何か変な感じとかねぇの」
「別に…この場での不快感はいつものことですし」
だよなぁ。そう笑いながら、蒼光に淡く浮かび上がる頬の輪郭を辿らせる工藤の手に。瞬間びくりと白い肩が振れると、その押し殺した息遣いをままに相手の首筋で濡れた音を立てさせた。

「…っ……く」
「…そのままだとアレだからよ…少しだけ我慢、なっ」
「…やめてく…や、ぁ」
いや、だ。そう微かに聞き取った後工藤はやはり笑いながらグッと汗ばむ肩を抱き寄せる。
耳元すぐで響く音に、一体己は何をしているのか…而してそう考えを巡らせることすら最早億劫で――だが。

「……ぴぃっ―――!!?」
「なっ……!?」
「なっ……んだこれ…ちょ、な何っ!?」
「…やっべー…だろこれは」

思わずそこをチュっと吸い上げてやれば――何ということか。
その変貌っ振りに、工藤の目の前がスパークしたのは至極当然のことだった。



―――ガバッ!!
「工藤…何のつもりです…」
「いやその、ハハッ…似合ってるぜ?それ…っ!」
晴れて麻酔の切れたその瞬間、ベットリとそこを舐めまくっていた不埒な輩へと蹴り上げ。次によろけた相手の胸座を掴み上げて豪語する。

「…これだけの為に、こんな……はぁ……嘘だろ…ぴぃっ!!」
ケホ。と更なる怒りをぶつけられた工藤は浮上して、さり気なくまたそこを撫で上げた。
途端かん高く、而してどこか甘い響きのそれが上がれば。この勢いにとばかり工藤はぎゅっと抱きつく――この、頭の左右にぴょこっとうさ耳の生えた見た目も愛らしい生き物に。

「だってオメー絶対、嫌がって暴れるだろ」
「そりゃそうでしょうっ!こんな…変テコなものどうしたら…ぁぁっ!」
「その多分…見たかったんだ、……悪ぃ!」
「ふん。…言いたいことはそれだけですか」
そっ方を向かれても、時折ピクッと震える白い柔らかな毛に包まれた薄い皮膚のそれに釘付けだった。
そうして恐らく、きっとアレもアルだろう…あれがっ。

「…可愛い」
「いつ、…てか直るんですよねコレ」
「もう帰るのかよ!…灰原も見たいって言っててだな」
「女史がそう仰るなら…も少しだけ」
「……ははは」
それにしても…我ながら何という生き物にしてしまったことだろうかと眺める。
試しにと被せたシルクハット…少しずらせば、忽ち愛らしい白いうさぎ耳のお目見え。

「奇跡だな」
「…うるさい。近い、暑苦しい、邪魔でっ――ぴぃっ―――…!」
特に、この何とも可愛いらしすぎる…鳴き声…有り得ない。
ぎゅうぎゅうと態とひっ着くように抱き締めては、ふさふさと柔らかな毛並みを唇でなぞる。偶に口に含みつつ、クイッと引くと。

「引っ張るなバカっ」
「じゃあさ、これは…?」
「………う、ぴゃぁっう!…っ…んんっ」
想像を遥かに上回る可愛いさだった。そうして今度は気になる…恐らくはぴょこっと可愛いく動くであろう、フリフリの尻尾を探り――。

「……何、してんですかっっっ」
「とわゎっ!……いや、尻尾はないのかって」
「――ある訳な……、ん?え……こ、れっ!?」
「ど、どれ…?」
「此処、ですよ…」
「……つ、……マジっ、て…!?」
な訳ないでしょう。くすくす…とそう耳元を過ぎったその瞬間、トンっと鳩尾に衝撃が走り。それでも、ギリギリまで弄んでいた白いうさ耳を手放さずに沈む辺りは流石と言うべきか。
而して突如として頭から実際に生えたこの特殊物は、そのイヤになる程の敏感肌っ振りで。全く見事なまでに全ての感覚として事細かに、伝えてくれるのだから。

「――御約束。工藤はこれでいいとしてとりあえず、女史に泣きついてみますかね…ね。キッドさん?」
「あちゃ。…バレてたか」
何となくだが彼の人にも――そんな気がするのは、やはりこの敏感うさ耳の所為なのか。
工藤が沈む直前辺りから様子を窺っていた様だったが。

「工藤…倒しちゃったんだ?うさちゃん怪盗殿w」
「―――言いたいことは、それだけか……キッドうさぎさん?」
「うっ。………ぁっや、そこはっだ、駄目…v」
「うるさいっ――」
「ぁぁっ―――!…ってなんちゃってw…その通り、この俺もシルクハットの中はうさ耳なのでしたっはっはっはぁ!」

――笑い事じゃないでしょうっ…ぴっぴっ
――んっ…ちょv 引っ張っちゃイヤだぜ…チュッ。ペロペロ
――女史じゃなくて貴方でしたかキッドさん…カミカミ
――いや、最初にやられたのは私ですよ。で、どうせなら貴方にも!と思… はぅっんv

「…いってて。あ、うさぎが二羽」
「――って何で工藤気づいちゃうかな…手加減したんじゃねーの?」
「あっはっは。いやーついつい昔の癖で(ぎっこり)」
「あれ、…今何か拙いとか」
「態とか」
「今です工藤!うさぎ狩り決行っ…ぴっ!」
「オメーもな。…さあ、お楽しみはこれからだぜ…?」
「…う、マジ…?」
「マジ」
定まる照準に冷や汗のうさ耳キッド…果たして――二羽のうさぎを待つ運命は如何に!?

おわし


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