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□さぐたん記念…って遅いよ(泣)【彼のそれが甘いわけ】
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「白状しましょう。そうです、私の目的は貴方の…その先にあったのですよ。私の、満たされることのないある感覚を取り戻すために。貴方につけ込み、ただ利用しようとしていた」

淡々と吐かれる台詞に目を見開く。
怪盗は苦笑混じりで、しかしてやんわりと続ける。

「唯一私を動かした貴方だからこそ、可能だと思っていました。だって本当に、初めてだった…あの感覚は。」
恍惚に浸る彼の表情はとても綺麗で、無意識に力が抜けてしまう。

「…利用されているのは別に構わない。君だって必死なのだから。ただ確かめたかっただけなんですよ。今の貴方の気持ちをね」

…本当にそうなのか?ならば何故此処がより酷く痛むのだろう?
…こんな状態で強い肯定を望んでしまうのか。

「今のままでも構わないと仰る…ならば今、この手を掴んではくれないのでしょうか」

言葉とは裏腹に狼狽の色を隠さない探偵の頬にそぅっと手を触れた。
色めき立った顔を寄せられ、鼓動がドクンと大きく、速まっていく。

「いつの間にか私を…いっそ清々しい程に私たり得なくしてしまった貴方に。――迂闊にもこの心ごと絡め捕られ、この指の先一杯にまでにも及ぶ…貴方を求めてやまない私のこの想いを。私はどうしたらいいのでしょうか」
「――えっ…?」

何だ…?一体何が何だか理解できない。

あまりに唐突な、怪盗の有り得ない告白に瞬きすら忘れていた。

「ですが、正直悔しいです。怪盗の私だけでなく…俺まで。お前に全部持っていかれたんだからな。解るか!?この悔しさ…っがぁぁぁ畜生っ!!」

怪盗の表情から一変して現れたクラスメートの彼の表情。
ギリギリ言わせている様子から、余程の悔しいと見える。その頬はほんのり染まっていたけれど。

「言っておくけど、この怪盗KIDを惚れさせちまった探偵どのには…いろいろと覚悟してもらわないとな。…お前が用意してた仕事着を着なかったのも、まぁそういうことだ」

「あ、の…?僕はっ一体どうしたら…」
情けない位、恥ずかしさに身がのぼせ上がる程だった。
だがそれ以上に想いは膨らみ、溢れる感情に…動けなかった。

「別に。お前が決めりゃいいんだよ白馬」
「僕は…って、本当に君は…僕なんかと!?」
「そう。怪盗なんかに入れ込んだばっかりに、その怪盗に逆にモノにされてしまうという…憐れな探偵どの。そんな貴方が…」

怪盗はじっと見つめる探偵の手を取り、口付けを贈る。

「今日は誕生日だから、サービスv」
「なっ…なな何をするんだっ」
「酷ーい、白馬探偵。私にばっかりやらせるなんて…」
目の前には何故か妙にノリノリな怪盗。…下は穿いてはいないけれど。

「プレゼントのお礼もまだ聞いてない気が…っ、!」

腰をグッと引かれたかと思えば反転する視界。探偵にガバッと覆い被さられ、開いた口へ空かさず舌を滑り込ませられた。
銀糸を引きながら離れた探偵は、怪盗を見下ろして悪戯に笑む。

「ありがとうございます。貴方の方から熱烈な告白を頂けるなんて思わなくて……自惚れてもいいかい?怪盗君」
「どうぞ?今日だけならば、ご存分に。…では、改めて」

探偵の両頬を手に包み、己の胸へと埋めた。




「っは…っ、く、ぁぁあ…っ―!」
「KID…くろば、く…っ!」

ゆっさゆっさと一等強い揺さぶりに、怪盗の昂りはその白の果てに意識と共に弾け、探偵は怪盗の中へドクドクと白に蕩けた想いを放った。


  +   +   +


温め直した珈琲カップを手に、テーブルの上…ケーキ第二段を二人で頬張る。
ふと、探偵がサラサラと砂糖を入れている様子を見つめていた怪盗が口を開いた。

「白馬探偵、珈琲は微糖派なんですね」
「ええ。その方がコクが出るかと思いまして…君は、確かどちらもかなり入れてましたよね」

「まあ確かに。…ですが、実を言うと私はブラック派なんですよ」
「な…に。それは本当ですか!?」
「ええ。はい…冗談ではなくv」
そう言って、立ちのぼる薫りに顔を綻ばせながら、まだ黒いままの珈琲を口に含む。
まさかの告白に唖然としつつ、更にもの凄いスピードで手持ちのケーキが減っていく様子に目を見張った。

「ねえ白馬探偵。貴方にはこれをどう思われますか?」
指し示されたのは、何の変哲もない怪盗の飲んでいた珈琲だった。
何を言うべきか言葉を巡らせているちにサッとその中へミルクが入れられ、白が渦を巻くように広がっていく。

「……」
「どうご覧になられますか?」
「どうって…珈琲にミルク、としか」
「まあ、そうなんですけど。この混ざり方がミソなんです」

「……うーん…?」
先ほどから一向に掻き回さないのはその為だったらしいが。一体怪盗はこれが何だと言うのか。



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