■文、etc


□S→□K□ ※特殊…残こくな天使の〇〇〇
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 それでも、と縋るように肩に触れようとした時…。

「だからそれ以上こっち、に来ては……っあぁ、駄…目だ、ぁぁっと…!」
「…KID!?」
「……やく、離れっ…っふぅ、くっ(コラ!ちょっと)」
「…!!?」

――え。お………い、おいおいおいおいおいっお…い!!!?

 何だ何だ今度は…。今怪盗から、何かあられもない声が聴こえなかったか!?

「はぁっ…障りがある、と…言った、でしょう?」

――だから、そんなヤバい目でこっちを見てくれんなよ。頼むから!

「なっ、……ななななななっ、なぁぁあ!!?」


――ちょっと待て今、何か…。

「いい加減…ないと、馬に…蹴られます、よ」

――ウッ!!?…ぎゃぁぁぁぁあ!!!?


「(ちうっ)こんな白い駄馬ですけどね…蹴られたら、市にますよ?工藤君」


「ぶ、ばっ〇#×□△!!!!?」
「お取り込み中済まないが…先客がいたんですよね」

「ば、か…出てくんっ…なって…うぁ!」

「窮屈で仕方がなかったんですからね。全く…貴方の気紛れには本当参りますよ、と…大丈夫ですか…工藤君?」

「つかもう…んなとこ弄ってんじゃねぇよ白馬か!」


「ぁぁ………大丈夫…な訳あるか!!!んなっ…ハッ、マジかよ…何でっ何でだあぁ!?うぉぁあー!!!」
「(ふぅ…)落ち着いて下さいよ工藤探偵」
「……この野郎っKID、何で寄りによって」

ぎゅうぎゅうと頭をマントの中へと再び押し込められようとしている先客を見やる。
悪夢とは…かようなものを言うのか。クラリ眩暈がした。

「工藤探偵…貴方は随分前から此方にいらっしゃらなかったでしょう?私は正直寂しかった…元の姿を取り戻されてからも、貴方ならきっとすぐに来てくれるだろうと思っていたのに」

「それは…っ!」
勿論すぐに此処へ来たかった。けれど元に戻りたての時は一時的に記憶が飛んでいたり、なかなか予告がなかったり等して…。

――情けねぇ話だな。
誰も止める者もなく…この道を選んだのは工藤自身なのだ。
この姿での新たなハンデを異常に意識しすぎた結果が…。

――俺だってことは変わらないのにな。


「――そしたら、白馬探偵がいきなり私を……痛っ」
「ン、ンー。えーと誤解されては困るな。押しかけてきたのは君の方だろう」
「違っ…あれは、お前が物欲しそうな顔してやがったから、つい」
「失礼な奴だな。しかし君は…つい、で人に夜這いをかけるのか?大した怪盗紳士だな」
「…散々**してくれてよくそんな口が利けるもんだなエロ探偵君?」

「エロいのはどっちだ、わざわざこんな場所に呼び出した挙げ句、この僕に***をさせたまま自分は他の男と…一体何のつもりだこの**!」
「ちょっと待てって言ってんのに聞かねーで勝手にしてくんのはテメーだろ!それにいつも現場には来るなって言ってるだろーが!バカッ」
「来るなと言われて、行かない訳にはいかないだろうこの意地っ張り!」
「フンッ、天の邪鬼ですね」
「君は本当は嘘が下手なんですよ…殊に僕相手には」
「自惚れも大概に」
「厄介だと思ってる癖に」

「…テメーのっそういう所がなっ!!」
「僕を見て、笑ってくれることが…こんなにも嬉しくてたまらないんです。ときどきでいいから、僕を安心させて」

「…もう無茶はしないって」

「そう言ってる間に、こんな所で工藤君に言い寄られてるなんて…全く流石だ」
「お前がガッつくからバレたんだろうが」
「僕があのまま放っておくとでも?」
「いや、お前がな…っいいや。もう何でもねぇ。悪かったよ…この話は終わりだ」
「良かった。ところで、この体勢はかなりキツいんだが」
「…あーもっ!ハイハイとっとと出て行きやがれっ!!」

「あのっ!…さ、アンタら一体…どんな関係なんだ?」

 漸く終わったか。これだけ罵り合ってど突き合っている二人は、しかしてそういう仲らしいのだが。

 人前でこれだけ盛大に惚気合戦を繰り広げるのはこれ如何に。

「どんな…って、なあ?」
「ええ…まぁ見たままの関係ですよ?」

「あーそうですか。聞いた俺が馬鹿でしたよっこの…バカップル!!」

しかし何だろうかこのときめきは。

 世界で最高の阿呆な二人になったとき…又は出逢ったときに。
 人はこんな気持ちになれるのかもしれない。目の前にいるのはまさにそんな感じだった。

 怪盗が、一体どんな傷を負ったか知らないが。
 ハビリ云々と言いつつも、ちゃっかりその相手との逢瀬をやってのける…とことん倒錯的で、相変わらずミステリアスな奴だと探偵はまた笑った。

 しかして、知り合いの探偵とライバルの怪盗との衝撃的場面を目の当たりにしたと言うのに。
 但己れの好いた者のありのままを見てやれるだけ、この工藤という男も漸く一皮剥けたらしかった。

 今目の前にいる白い、食えない男こそ探偵が心惹かれてやまない…月で。
 例え証拠を並べて数え上げてみせても…この怪盗は決して自由を手放さない。いや…恐らく周りの人間が、それこそを望んでいるから。

 今夜も宴の酔いも冷めぬ内に、屋上からそれはやがて飛び立つ。

「工藤君も身を以て知っていると思いますが、さながらあれは残こくな天使ですよ」

「…違いねぇ」

「僕にもなかなか手厳しいですがね…しかしもしかしたら…以前の君になら、懐いてくれるかもしれませんよ?」

「ヤだね。懐いてくる鳥なんて要らねえ。」

「フッ。やはり君は僕の敵らしい」



 ライバル同士二人、それから暫くは…もう一人の恋人についての語らいに花をさかせたとか。






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