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□第2幕
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表通りの喧騒が聴こえる裏路地―。
対峙した2人の間に沈黙が流れる。

見られた!?
コイツは本物の輪か?自分を捕まえに来たのか?

一瞬で色んな思考が頭の中を巡り、冷や汗が流れる。

捕まるわけにはいかない…。


「…私に、何かご用でしょうか?」


意識して落ち着いた声を出す。


「あぁ、そんなに警戒しないで。できればその物騒なモノを構えるのも…」


その言葉にピクリと身体が反応する。


「君みたいな可憐な子が持つものじゃないよ」


男からは見えない位置で触れていたナイフから、そろそろと手を離す。

腕を降ろした自分に満足したのか、男は優しい笑みを浮かべる。


「ありがとう」

「…俺を捕まえに来たのか…?」


警戒は解かず、一定の距離を保ったまま今度は敵意を向けて問う。

相手のステータスは分からないが、いざとなれば逃げるか、素早くナイフを構えることはできる。


「その言い回しは少し語弊がある…。私は君を保護しに来た」


柔らかい口調でそう言った男の言葉に戸惑う。


「なんのためだ…」


さっきコイツは自分のことを輪の艇長だと名乗った。

だとしたら、殺される覚えはあっても保護される覚えはない。


それか、“あのこと”については知らないのか…?


「それは君が1番よく知ってるだろう?」



 
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