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□第1幕
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「アレが起きる前に俺はズラかるから」
今回の収穫物が入った荷物に手をかけつつ言うヒスイに、花礫が近づく。
「なぁ、お前ってここらへんに住んで長ェの?」
「…まぁ、」
探りを入れてくるかのような花礫にヒスイが警戒の色を濃くする。
「同業者のわりには見かけねーよな」
「…”今の俺”は仕事用だから」
どこからともなく出したナイフをひらひらと振って見せ、手際良く収穫物を取り分けていくヒスイ。
「つまり表でお前とすれ違っても気付かねーわけか」
「あぁ」
もう用は済んだ、というように立ち上がったヒスイはそのまま出口に向かう。
「………」
不意に足を止め、小さく「あの時、助けてくれてアリガト」と呟き、そのまま振り向かずに出ていった。
突然の事にキョトン、としていた花礫は、ヒスイの手を引いてミネの腕から間一髪のところで助けたのを思い出す。
「(ちゃんと礼言えたんだな)」
先程までそこにいた不愛想な翡翠色の少年を思い浮かべる。
「(他の馬鹿な奴らとは違う、不思議な奴)」
―コツ、
再び細い路地裏を歩き、誰もいないのを確認して変装を解く。
「(今日はわりと稼げたな)」
本来の自分に戻ったところで、表通りへと歩き出そうとした、瞬間。
「やぁ、初めまして」
不意に目の前に落ちた影と言葉に硬直する。
「私は国家防衛最高機関『輪』第貳號艇長の平門というものです。…探したよ、ヒメさん?」